IPO市場の投資家は一体、何を考えているものなのだろうか。マクロ環境を考えているだろうか。もしそうならば、2004年第4四半期のGDPが前期比0.1%減だった。だとすれば、四半期ベースでは連続して減少していたことになる。つまり、日本経済は、完全に景気後退期に入っていたわけだ。
景気後退の構造は、企業の設備投資が好調な半面、消費が弱い形だ。所得は個人に薄く、法人へは厚い形で蓄積してきている。
そんな環境下にIPO市場で起きていたのは、「積極物色」だった。投資家は、マクロ環境を無視した投資行動に出ていたことになる。昨年、IPOした175銘柄を全体としてみれば、1月末で8%上昇していた(初値比較)。公開価格比較では102%の上昇だ。175銘柄のうち、初値が公開価格を下回ったのは7銘柄にしか過ぎなかった。
このことは、経済環境の動向とは関係なくIPO銘柄には資金が流入していることを示している。あるいは、経済環境に関係なく成長できる銘柄がIPOに向かっている。このうち、全体の78%に当る107社が非製造業で、その中の52社がサービス産業だった。IPO市場はサービス産業の市場でもある。積極的に理解すれば、企業向けサービスを提供している小型成長企業は、経済環境に合致して業績を上げ、投資家からも注目されている。
2月25日現在の10社移動平均で見た初値倍率は1.99倍。IPO人気とも言える昨年の2月末は1.8倍だった。1年前と比較すれば、今年は景気が後退のシグナルがはっきりしているのに、人気が高いといえる。
ただ、1月末の初値比較、12月末比較よりも低下してきている。初値倍率も下降のグラフを描いている。調整懸念が市場にはある。昨年公開銘柄の55%は1月末で初値価格を下回っており、利食い指向も強い。
さて、背景としての強さと、短期の動向での警戒感をどう考えるべきだろうか。考えられるのは、余裕資金によるリスク許容量の増大だろう。CRBが24年振りの水準をつけてきたことからも分かるように、余裕資金は運動を起こしたがっており、国内では、その矛先が、手軽なIPO市場に向かっている。今月も、下げても悲観する人は少ないだろうと思う。
日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり |