読者の皆さんには毎日必ず見るサイトがいくつかあるのではなかろうか。世の中にいくつのウェブサイトがあるのか数えてみたことはないが、日本語サイトの数だけでも1000万以上はあるに違いない。そんなに多くのウェブサイトをいったい誰が作っているのであろうか?という疑問もでてくる。
正直言って筆者は「簡単ホームページ作成ソフト」があったとしてもサイトの構築はちょっとどころかかなり難しいと思われる。ましてや見栄えの良いサイト構築などはまったく不可能な話である。読者のどなたもまさか筆者が東京IPOのサイトを作っているとは思われてはいないと思うが、まったくそのとおりで専門のスタッフ(その他の業務も兼任しているが)のセンスの良さで皆さんの見やすいサイト構成になっているのである。東京IPOの話はさておき、今回はウェッブサイトの構築や3Dで動くゲーム製作などのデジタルコンテンツクリエイターを派遣するデジタルスケープ(2430大証ヘラクレス)の藤川社長にお話をお伺いした。
当社は1995年に創業し、デジタルクリエイターとITエンジニアに特化した人材派遣・紹介事業を展開している。もう少し平たい言葉で説明すると、ホームページなどを作るウェブ技術者・デザイナーやデジタルゲーム・CGなどのクリエイターを集めて企業に派遣するビジネスを行っている企業である。なんだ、ただの人材派遣業か、パソナやスタッフサービスのように電話すればスタッフを派遣してくれるんだ、と考えるのは早計である。筆者が自らのことを書いたように、この分野は特殊なソフトやツールを使いこなさねばならないことに加えて、なんと言っても「想像力」「表現力」が豊かでないと人材としては不適格となってしまうのである。
ビジネスモデルとしては、できる人材を集めてニーズのある企業に派遣する、という至ってシンプルな構図である。まずはできる人材をどのようにして集めるか?であるが、人材の登録は、グループ会社のデジタルハリウッドなどの専門学校卒業者、口コミ、広告媒体のそれぞれのルートから三分の一づつの応募がある。応募者に対しては、当社が独自で開発した「Meets(ミーツ)」と呼ばれる人材評価システムを使い、「テクニカルスキル」「職務スキル」「ヒューマンスキル」をチェックすることで、企業のオーダーに対して的確な人材が提供できる仕組みになっている。昨年9月末の登録者数は9,199人とそんなに多くないように見えるが、事務職スタッフの派遣業のように登録者を多く見せても実際に派遣できる実力者でなければ意味がないのである。
実際に登録に来る人の10人に1人くらいの割合でしか即戦力はいないようだ。そこで、当社では独自のトレーニング・プログラムを開発し、最前線で活躍するWebデザイナーやCGデザイナーを専任講師に置いて、集中的なスキルアップコースを設けている。自社内のWebやCG専用のトレーニング設備を利用して同時に約40名の受講が可能となっている。そのお陰で、受講者の70%以上が派遣として稼動しているそうだ。
一方で、登録者はどこに派遣されるのか?ということであるが、クライアント企業は有名どころがずらりと名を連ねている。ゲーム関連では、コナミ、ナムコ、マイクロソフト、セガ・・・、WEB関連では、凸版印刷、NTTグループ、ソニーグループ、松下、リクルート・・・等を含む300社で、上位10社の売上だけで全体の24%近くを稼ぎ出している。登録者も派遣先の名前や仕事の内容に惹かれて質の高い人材が集まる傾向にあるようだ。企業サイドのニーズとしては、ゲームやウェブ構築はプロジェクト単位で仕事が進んだり、仕事の量に波があるために自社の技術者だけで仕事を進めるのは雇用リスクがあると考え、雇用の柔軟性を持たせる意味で仕事の20〜30%程度はアウトソース志向がある。当社の派遣は、通常6ヶ月〜1年程度のプロジェクト期間に合わせたものが多く、ゲームクリエイターの場合はチーム単位で派遣することが多いそうだ。
最後に当社のビジネスの将来性であるが、当社の人材派遣ビジネスは半年〜1年契約に基づくものがほとんどで半年以上先まで売上が読めるのが特徴である。また、市場の成長性という意味では、デジタルコンテンツ市場は2001年の1.9兆円から2010年に6.3兆円まで伸びると言う予測を経済産業省が出しているが、そんな大きなマクロの数字を聞かなくても、日々の生活の中でインターネットの利用頻度が高まり、子供に限らず大人までもがデジタルのゲームを楽しむ時代に突入してきたことを考えれば何もコメントの必要はないであろう。会社の売上成長は年率20%と全社で共有された目標があるそうだが、当社が質の高い人材を提供しつづけることが可能な限り、しばらくは底堅い成長の持続は保証されていると言っても言いすぎにはなるまい。
デジタルスケープホームページ:http://www.dsp.co.jp/
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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