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編集長のジャストフィーリング 〜やはりこの問題に一言触れておきたい(その1)〜
東京IPO編集長 西堀敬

2月8日の株式市場がオープンする前から始まったライブドアのニッポン放送株取得に関する一連の騒動は多くの日本人をテレビに釘付けにした。本件について筆者なりにいろんな立場にたって事の成り行きがどうなるかを推察してみた。読者の皆さんも自らの置かれた立場を考えながら賛否を議論してみてはいかがだろうか。

まずライブドアの堀江社長の立場。1972年10月29日生まれで当年33歳、1996年4月22日にオン・ザ・エッジを創業。2000年4月6日に東証マザーズに上場、60億円を市場から調達し、初値ベースの時価総額は570億。その後、株式分割の手法により昨年の1月には1兆円近い時価総額まで株価は上昇。その後、同年4月にライブドアは公募増資で300億円を調達、堀江社長も売出しにより30億円を手元にする。ここから堀江社長の快進撃が始まるとみるのが妥当である。

昨年は新球団の設立にいち早く動くも楽天に先を越されたうえに、ソフトバンクにも別の機会を提供してしまった。また、ネット銀行のイーバンクの買収も経営陣との対立によりその機会を逸してしまっている。やることなすことがすべてうまく行ってないように見ている人もいるかもしれないが、昨年は日本グローバル証券、バリュークリックジャパン、弥生などの企業を買収し、業績は完全な右肩上がりの成長を遂げている。連結ベースの売上と経常利益はここ数年間は毎年2倍のペースで伸びている。

いろんな新規事業に果敢にチャレンジしていると、すべてがすべて結果オーライにはならないのが常である。堀江社長のケースを見ているとそんなに結果は悪くないとみるべきであろうが、実業をやっている経営者の目から見ると羨ましいほどのすばらしい結果を出しているように映るはずである。

堀江社長の今回の行動について賛否両論ある。守旧派にとっては、とんでも無い行動で、土足で他人の家に入って仲良くしましょう、はないだろうとなる。農耕民族の日本人にはこのような考えの方が大勢を占めているといってもいいだろう。しかしながら、農耕民族的発想で日本人が居つづけられるのかを問うてみるべきではないだろうか。先祖代代の土地で受け継がれた仕来たりに基づいて生活を続けることが日本人にとって幸せなのだろうか?との問いに、自分を当てはめて問うてみてはどうだろうか。

筆者は堀江社長を強く擁護する立場にもないし、擁護しなければならない理由も無い。しかしながら、IPOしてくる若手経営者を見ていると、旧来型の発想では説明のつかない価値観で生きているのは間違いない。自民党の重鎮や経済界の大物経営者が堀江氏を批判するのは、自らの価値観に合わない発想をする新しいタイプの経営者の登場に恐れおののいているのである。1年前までは株式市場を使った錬金術に舌を巻く程度であったが、今回は自らの領地にまで攻め入って来られたからには「もう我慢ならん」と言うのが本音ではなかろうか。長年かかってここまで築いてきた価値をいともたやすく他人に取られてしまう口惜しさと、自らが生きていく環境を破壊される恐怖心が日本の守旧派陣を総動員してフジサンケイグループを守ろうとしているように見えてしまう。

米国の事例ではあるが、インターネット事業と放送事業の融合におけるケースとしてAOLがタイムワーナーと合併し、時価総額が上回っていたAOLのオーナーであるスティーブ・ケース氏がトップに立つのだが、その期間は長い歴史の中においてはほんの一瞬ともいえる数年であった。筆者には33歳の堀江社長にAOL創業者のスティーブ・ケース氏の影がちらついてしまう。仮にライブドアがニッポン放送やその先にあるフジテレビを資本の論理で手中に収めたからと言って、ライブドアが中長期的には決して勝者とは言えないのではなかろうか。

堀江社長がどこかの誰かにニッポン放送株式取得の知恵を授けられたときは、きっとエキサイティングな瞬間で株式市場を使えばなんでも実現可能だと思ったに違いない。しかしながら、ここに来てきっと興奮は冷めて次なるアドバイザーの出現を待ち望んでいるのではなかろうか。必要とされる人物はネットと放送の融合を可能ならしめるような新しいビジネスモデルを構築できる人ではなく、肥大化していく組織をマネージできる経営のプロフェッショナルではないだろうか。 (次回に続く)

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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