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編集長のジャストフィーリング 〜やはりこの問題に一言触れておきたい(その2)〜
東京IPO編集長 西堀敬

前回からライブドアのニッポン放送株式取得について筆者の意見を書き始めた。今回はその続編であるが、ソフトバンク・インベストメントが登場して休戦状況になってきたので

ややホットではなくなってきている観もあるがそのほうが冷静に見ることができそうだ。

今回のライブドアの件は、サラリーマン諸氏だけではなくOLの方々にとっても、月曜9時に始まるテレビドラマよりもきっと面白いドラマを見ているような気分になれるのではないだろうか。現実問題、登場人物がめまぐるしく変化し、事の顛末がどのように決着するのかがまったく見えない筋書きのないドラマであるが故にその面白さが倍増して国民的な関心事になっているのである。

今回は、堀江氏の立場ではなくて、フジサンケイグループの経営トップである日枝会長やニッポン放送の亀渕社長の立場を考えてみる。ニッポン放送は昭和29年4月23日設立、同年7月15日に開局している。亀渕社長は当年で62歳、ニッポン放送でDJから社長にまで登りつめた叩き上げだ。一方のフジテレビは昭和32年11月18日設立、昭和32年3月1日に放送を開始している。日枝会長は当年で68歳、新卒でフジテレビに入社し50歳で代表取締役社長職についている。それぞれの会社は戦後の日本において、メディアの中核を担ってきた立場にある。ラジオやテレビは世の中の人々に大きな影響を与える存在として、戦後の各種ブームの先駆けとなった時期もあった。どちらかというと両社ともにエンターティンメント系に強いメディアであったと言えよう。

今回の件においては、受け身となる二人の経営者の心境や如何に?を考えると、東京高裁が出した結論の背景となる経営陣の保身を如何に実現するかにかかっているように思われる。筆者の親しくしているIT企業の経営者の集まりにおいて、本件に対する賛否を問う質問をしてみたところ、自身の経営者としての立場を考えなければ堀江氏に賛同、現実の立場を前提とすると日枝、亀淵両氏に賛同という意見が支配していた。つまり時代背景を考えればやむを得ない事態なのかもしれないが、二人が今日の体制を築くのに相当の時間を費やし、そのために努力をしてきたのかを考えれば、数ヶ月間でその歴史の結果が雲散霧消してしまうかもしれないような今回の出来事への対抗として保身に動くのもまったく当然のことで同じ人間として理解できる話である。

もし仮に筆者が二人の立場であったらどのように動くか?を考えてみると、もちろん目には目を歯に歯をという行動もするであろうが、ちょっと違った行動をとるのではないだろうか。前提は立場が同じであっても、筆者の年齢という異なる条件がつくところでその違いが起こるといえる。筆者と同じ45歳の経営者であれば、今後10年ではなくて、20年、いや30年後のことまで視野に入れて計算するのであろう。自分が生きている間にもしインターネットとテレビやラジオが融合してもっと大きな価値を生み出すケースが出てきたらそれは完全なる自らの経営者としての敗北であると考えるからである。

戦後の日本が復興して世界第2位の経済大国になるまでの間に果たした二つのメディアの役割は今や変わろうとしていると考えるべきである。敗戦国日本の国民の笑顔を創造しながら一方で国民を励まし世界経済を牽引する国になるまでのメディアのあり方と、経済でも政治でも第2位はおろかそれ以下にまで転落して行こうとしている日本国の放送のあり方をもっと考えるべきではないだろうか。私にとってのテレビやラジオはいまやエンターティンメントとしての要素が非常に大きく、ジャーナリズム的な側面から国民を啓蒙する要素がおおよそ見つからないことが残念である。

筆者がIPO企業の経営者にインタビューにお伺いした際にいつも感じることは、いずれの経営者にも共通しているのは世の中に新しい価値を創造しつづけようという強い意志である。残念ながら受け身の二人には「価値を創造しつづけようという強い意志」を感じることはできない。「価値創造」という側面においては年齢にこだわる必要はなく、その実現は「意思」の強さに比例するように筆者は見ている。それはIPO企業の社長の年齢にも現れており、今世紀に入ってからIPOした企業の経営者の平均年齢は52歳、60歳以上の経営者の割合も25%を占めている。フジテレビジョンとニッポン放送の経営者のお二人にはこれからIPOする前提で自らの企業価値創造について投資家に訴えかけていただきたものである。(続く)

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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