デジタルカメラの普及によりカメラのシャッターを押す機会はずいぶん増えたのではなかろうか。カメラ付携帯電話なども含めると10年前にくらべて比較にならないほどの多くの画像を皆さん保有されていることと思う。では、撮った画像をプリントしてアルバムに貼ってあるかというと、そんなことはなくてパソコンのハードディスクの中に山積みされているのが実情ではないだろうか。筆者も出かけるたびにデジタルカメラで写真をとりまくっているが、プリントした記憶はここのところ久しいといえる。もちろん、USBにデータを移して街のDPEショップに持ち込めば数時間後にはきれいに印刷されてくる。しかしながら、その先が良くない。写真を一度見たらそのまま放置してしまうのが落ちだろう。アルバムを買ってきて整理するなんて時間もなくてそんな面倒なことはできない人がほとんどだと思う。そんなことになってしまうことを知っているから余計にプリントしなくなってしまうのではなかろうか。そんな悩み(でもないかな?)を解決してくれるのが、アスカネットの提供する新しいサービスである。
アスカネットの事業は、目論見書によると葬儀社向けに遺影写真を加工するメモリアルデザインサービス事業の占める割合が多く、日経金融新聞などでもこちらのほうが先に紹介されている。しかしながら、福田社長にお話をお伺いしたところ、今回の上場の目的は安定成長型のメモリアルデザインサービス事業より、むしろ後発でスタートしたパーソナルパブリッシングサービス事業の全国的な衆知・拡販にあるそうだ。
今回のインタビューでは、パーソナルパブリッシングサービス事業について念入りにお話をお伺いしたので、読者の皆様にも当社が提供する新しいサービスについてご理解を深めていただきたい。冒頭にも触れたように、写真というものは従来「写真撮影→DPEショップにてプリント→アルバムに貼る」という流れであったが、当社では「デジタルカメラで撮影→インターネットにて当社サーバーにアップロードして編集→写真集が送られてくる」という流れに変わるところに新鮮さがある。デジタルカメラの急速な普及により、デジタル化されている写真データを当社が開発したソフトウェアをWEB上で使うことによって、比較的自由に加工、編集することができ、世の中に1冊しか存在しないオリジナル写真集の作成を実現することが可能となった。
この新しい流れによるアウトプット手法は、資本力のある同業他社やデジタルカメラメーカーが真似てくることはないのか?と心配してしまうが、そこには長年にわたる画像印刷技術力の蓄積により他社が当社と同じクオリティーの写真集を作る仕組みを構築するには3年間は要するであろうと福田社長は強調する。すでにデジタルカメラメーカー数社と業務提携をするなど当社の技術の優位性は業界でも非常に高く評価されていると言える。
では、その優位性のある技術とは何か?について説明しておこう。 いままで写真集を作成するには、印刷に必要な「製版」を行うため数冊の少ロット製作にはコストが高く不向きとされてきた。また印刷画像のクオリティーの面からみても、写真集のレベルまで高めるにはオンデマンド印刷と呼ばれる「無版印刷」では、一般的には色の表現や機器制御が難しいため、高品質で安定した印刷は困難とされていた。この技術的な壁を乗り越えて出来上がったのが、オンデマンド印刷で写真プリントと同等の高品質印刷により写真集1冊から非常に安価(2,500円程度〜)で作製する技術と仕組みである。色の表現においてはMTI(マサチューセッツ工科大学)でも公演をされるほどの色のエキスパートと共同開発を行い高度なカラーマネジメント技術によりインクを制御するプログラムを開発し、印刷においてはイスラエル製の印刷機を使用し当社専用のカラープロファイルプログラムを開発した。また、より高い品質安定度を実現するオンデマンド印刷機器の制御技術、使用用紙の表面処理技術などを加えることにより当社の新しい仕組みを実現させるに至ったわけである。
つまり、一見簡単そうなこのビジネスモデルも一冊単位で書店にある写真集のクオリティーで提供するには、画像系のアプリケーション開発技術・大掛かりなWEBサーバー運用・カラーマネージメント技術・用紙の表面処理技術・印刷機器の安定運用・一冊を大量に作る製本技術など、最新IT技術とアナログによる物作りの絶妙な融合が必要なようだ。
次に成長性について触れておきたい。メモリアルデザインサービス事業においては日本の人口構造からすると年間の潜在市場規模は50億円程度であるが、パーソナルパブリッシングサービス事業においては、DPE市場は8,000億円規模であり、1%のシェアをとっただけでも80億円の売上を確保することができる。そのような市場の背景からしても、パーソナルパブリッシングサービス事業の市場開拓が当社の最優先事項であることは言うに及ばない。過去の売上高推移を見ても同事業は年率2倍ペースで成長しており、今回のIPOによる公募資金で新たに印刷機3台やサーバーの増設などを行い年商20億円規模までの設備に強化する計画である。
顧客開拓においては市場を以下の3区分に別けて営業に取り組んでいる。
(1)業務使用のB2B市場
→ 顧客層:結婚式場、広告代理店、デザイン事務所、学校、建築関連等
(2)写真愛好家を中心とするデジタル一眼レフカメラで写真撮影をするハイエ
ンドアマチュアなどのB2H(High End Amateur)市場
→ 顧客層:愛好家人口200〜300万人
(3)一般コンシューマを対象としたB2C市場
→ 顧客層:すでに3万人の個人登録会員がおり月間3,000冊のオーダーが
入っている。
(全体では月間1万冊以上)
特に(3)においては、個人の所有するデジタル画像を無制限に預かることを念頭において営業展開したいそうだ。上場を機に実際のブックを手に取って見ていただく為に、5月には東京事務所を青山に移しギャラリーを開設して当社の技術で作製した写真集の展示や製作相談を行う予定である。
この連休中にお出かけされてデジカメで写真をとられた方々もパソコンのハードディスクに写真データを放置せずに一度当社の「マイブック」で写真集を作ってみてはどうだろうか。私はアスカネットの広報部員ではないが、この写真集は市販の写真集にも勝るとも劣らないの出来栄えであることを保証しておきたい。
写真集作製希望の方は → http://www.mybook.co.jp/
アスカネットのホームページ → http://www.asukanet.co.jp/
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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