最近、新規に上場する不動産投資信託(REIT)についても東京IPOのHPで取り扱って欲しいとの声が多い。現在20銘柄のREITが上場しており、個人投資家の人気は分配金を価格で割った利回りの高さにあるようだ。10年物国債の利回りが1.3%程度であるから平均で3%台のREITの利回りが魅力的なのは当然ともいえる。
今日のコラムではREITを上場企業の配当利回りの視点で買い進むリスクについて考えてみたい。
世に言われているリスクとは、REITの収益に直接影響する
・賃料の低下
・入居率の低下
であるが、昨今は収益ベースでの投資が重視されているため、数年で大崩れすることはなさそうである。
次に株式の価値を測る際に用いられている純資産倍率(PBR)であるが、REITには成長性という事業会社が持っている側面が薄いためPERに代わる非常に重要な指標であると考えられるが、REITが投資家から集めた資金だけで運用(投資)されていないという側面を重視すべきである。
PBRの平均値は1.5倍程度であるが、純資産以上に買われる理由のひとつに、REITは銀行借入などで資金調達をしてレバレッジを効かせている。出資総額の大きいREITの有利子負債を見てみると、
銘柄名
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総資産
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有利子負債
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日本ビルファンド |
4,303億円
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1,795億円
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ジャパンリアルエステイト |
3,223億円
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1,590億円
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日本リテールファンド |
2,447億円
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704億円
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日本プライムリアリティ |
1,986億円
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929億円
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野村不動産オフィスファンド |
2,080億円
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965億円
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となっている。
日本ビルファンドの有利子負債の平均調達レートは1.27%と非常に低い金利となっており、レバレッジを加速させる要因となっている。
ところが、有利子負債の調達レートが上がれば、それだけ利回りが落ちていくことになる。
何度も同じ銘柄を登場させて申し訳ないが、日本ビルファンドの調達金利が仮に1%上昇したとすると支払利息が18億円増える。前期の経常利益63億円は45億円まで落ち込む。投資物件が不動産であるが故に、金利が急上昇したからといって有利子負債を減らすにも限界があるはずだ。
先週、上場している不動産投資信託(REIT)が軒並み値を下げた。土地バブルの時代にあっては、理由も無く都心の物件のみならず全国の不動産が高値で買われた。その資金のバックアップを行った大手の銀行は不良債権の処理に10年以上の年月を要したのは読者もよくご存知のとおりだ。
REITのパフォーマンスを測る指標としてはROEよりもROAでみるべきであるが、極端に財務レバレッジを効かせている銘柄には金利変動リスクが高いと言える。過去不動産担保融資で大きな痛手を負ったプロの投資家である地銀までもが運用難からREITを買っていることを考えるとそろそろ相場も終焉を迎えるのでは?、と思えなくもない。
不動産が生み出す収益に変化がなくてもREITの利回りパフォーマンスは変化することを頭に入れた上で銘柄選択をすべきであろう。
最後に、東京IPOのユーザーには申し訳ないが、しばらくはREITについての情報提供の予定がないことをお伝えしておきたい。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com |