先日、新興市場のマンション建売業者の社長が、覚醒剤で逮捕されたことはまだ記憶に新しいだろう。業績も堅調でIRにも熱心な企業であったことから弊社(tiw)でもカバレッジ対象企業として昨年、検討したことがあった。しかし、担当アナリストと協議した結果、確認不可能な不透明な要素があるということからカバレッジを見送った。粉飾決算で上場廃止になった新興市場に上場していたソフト開発会社についてもビジネスモデルに信頼性が低いという点から見送った。やはり上場廃止になった鉄道会社については、従前はカバー対象としていたが、昨年(2004年)4月の時点で、親会社との取引関係が不透明でありコーポレート・ガバナンスの観点から問題がある、という理由からカバレッジ対象から削除を行った。橋梁談合については残念ながら予見できなかったが、問題企業に対する事前の回避行動は弊社では比較的上手く機能している。
こうしたことを申し上げると、「何故、それをアナリスト・レポートにはっきりと書かないのか!」とお怒りになる方がいらっしゃるが、「それは無理な話である」、とはっきり申し上げたい。証券アナリストは検察や証券取引等監視委員会(SEC)のような捜査権を保有しているわけではない。したがって、明確な根拠を提示することが困難である。仮に、偶然にも証拠を得ることが出来たとしてもそれ自体が“インサイダー情報”に該当する可能性が指摘される(新聞は報道という性格上、インサイダー情報には該当しない)。論理的説明が求められる証券アナリストが、どうも気持ちが悪い、胡散臭いという理由だけでレポートにすることが出来ないということは是非ご理解いただきたい。
さて、それではアナリストが取材活動を行ってもレポートを書かない企業にはどのようなパターンがあるかを紹介しよう。大雑把には次の5つ。
(1)面白くない会社
業績が悪い、成長性が期待し難い、時価総額が小さすぎるなど。投資対象として魅力の無い会社。アナリスト個人のキャパシティには限りがあるわけですから、投資家に魅力的な企業を紹介しようとするならば、こうした企業には手が回らない。
(2)バリュエーションが高すぎる会社
成長性も感じられて経営的にもしっかりした会社だが、バリュエーションが説明の出来ない水準にまで上がってしまっている。こうした時は、株価が調整してくるまでレポート執筆(途中まで書いたけど出さないなど)を待っている場合が良くある。こうしたケースでは、当然ながら、レポートを発行する際には「BUY」レーティングが多くなる。
(3)IRの悪い会社
本社が地方にあるにもかかわらず、東京で説明会を行わない会社。取材を申し込んでも拒否する会社(やんわりが多いのですが)。IR担当者がいつも捉らない会社。こうした会社はアナリストは安心してカバーできない。
(4)株価が乱高下して面倒な会社
○○エモン系の会社のように次に何をやるのかが予想のつかない会社。以前に書いたレポートとの整合性が取れなくなったり、前言を撤回したりと、アナリスト泣かせの会社。担当企業が少なければ良いが、手の掛かる企業にはどうしても手を出し難くなる。
(5)胡散臭い会社
危ない会社を推奨してしまったらアナリストとしては命取りになる(胡散臭い会社を売りにした場合も命の危険があるかもしれません)。胡散臭い会社は、まず社長をはじめ役員がなんとなく胡散臭い。一度面会しただけでは分からないことも多いが、数回面会してゆけば事業をやりたい人か、お金が欲しいために上場した人かの区別はつく。また、ビジネスモデルを突き詰めて考え、調べてゆくと合理的でないことが見つかることもある。
さて、結論ですがアナリスト・レポートが存在しない企業の多くは上記@〜Dの理由によるものです。しかし、投資家の皆さんにはアナリスト・レポートが存在しない企業については、その理由がどのパターンに入るのかを一度は考えてみてください。
時価総額もそこそこの水準にあり、会社側業績見通しが比較的順調であるにもかかわらず、アナリストがあまりカバーしていない会社。特に会社設立からの歴史の浅い会社については一応用心しておいた方が良いと思います。
まずは、東京IPOをはじめとした個人投資家IR説明会で経営者の顔を自分の目で確認しましょう。
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株式会社ティー・アイ・ダヴリュジェネラルパートナー 藤根靖晃
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