7月27日の夜、東京駅前の丸ビルにて女性限定のIRセミナーを開催した。当日はメインスピーカーとして2000年12月12日にJASDAQに上場し、21世紀IPO企業ではNo.1のパフォーマンスを誇るポイントの黒田社長にご出演いただいた。
2000年を振り返ると、春先にはネットバブルが崩壊し、インターネット関連の銘柄が大暴落したことは多くの投資家の記憶に深く刻まれている。2000年には以下のようなネット企業が上場している。
上場日 |
社 名 |
公募価格
時価総額
|
8月3日
時価総額
|
倍率 |
3月24日 |
サイバーエージェント |
678億円 |
1,555億円 |
2.3倍 |
4月 6日 |
ライブドア(旧オン・ザ・エッジ) |
780億円 |
5,130億円 |
6.5倍 |
4月19日 |
楽天 |
4,072億円 |
1兆92億円 |
2.4倍 |
これらのネットビジネス関連企業の株価パフォーマンスは今でこそ、上場時に比べるとプラスになっているが、株価は上場直後から長い期間低迷していたことはご説明するまでもないだろう。
話を元に戻すが、筆者がポイントという社名を耳にしたのは、2003年の年初であった。当時、米国ハーバード大学のMBAコースに留学していた日本人のチームが日本のIPO市場に関するレポートをまとめるので当社が有料で提供しているIPOストラテジーのデータを格安で提供して欲しいと連絡してきた。その数ヵ月後に留学生から、2000年上場企業の中でポイントという企業の株価パフォーマンスが突出しているがビジネスモデルを教えて欲しい、と聞かれたことがきっかけで業績と株価をフォローするようになった。
過去に開催したIR会社説明会における筆者の講演で、ポイントの株価パフォーマンスについては何度も触れてきた。その度に、もうそろそろ業績も株価も天井ではないかと思ったことがあった。今回改めて黒田社長から直接お話をお伺いした内容について今日は読者の皆様にもご披露しておきたい。
ポイントの公募価格時価総額は25.6億円、8月3日現在の時価総額は1240億円と、4年半で48倍となっている。メディアの報道はややもすると時代の流れに合ったインターネット企業にフォーカスされがちだが、企業価値を伸ばした企業としてはダントツのパフォーマンスである。
因みに、上場時と現在の経営数値を比較すると、売上:3.1倍、店舗数:3.2倍、経常利益:9.7倍となっている。
ここまでポイントの事業については触れて来なかったが、読者の中にはご存知でない方もいると思われるので簡単に説明しておこう。当社は、「ワクワクする普段のおしゃれ着」をコンセプトに、お客様のライフスタイルを提案するSPA型・ファッション・カジュアルの製造小売業である。
当社の特徴はホームページを見ると、
(1) 複数業態展開によるリスク分散により、安定成長が図れる
(2) ストアブランド中心のスタイル提案・ルックの絞り込みで、他社と差別化ができる
(3) 量販店と一線を画するプライスゾーンの維持で、低価格競争に巻き込まれない
と書かれている。
少し解説を加えると、まず、業態に関しては、1ブランドで100店舗を出店し、1店舗1億円の売上で年商100億円を目標としている。現在の主なショップ業態は、以下の3ブランドである。
ローリーズファーム → http://www.lowrysfarm.jp/
グローバルワーク → http://www.globalwork.jp/
ジーナシス → http://www.jeanasis.jp/
今期において、それぞれの業態別売上計画は、ローリーズファーム188億円、グローバルワーク135億円、ジーナシス35億円となっている。それぞれの業態を全国展開し、ひとつのブランドに偏らない仕組みを構築している。現在は、上記の3ブランドを含めた9ブランドで事業展開中である。
次に当社は「ストアブランド」、別名PB(プライベートブランド)、日本語では「自主企画商品」と呼ばれる当社独自のブランドで販売される商品を取り扱っている。当社における新しいブランドの立上げは、トップダウン型やデザイナーに登用によるものではなくて、現場の店舗発想で市場性のあるものをブランドマネジャー、MD、マーケティングマネジャーの3人で構築していく仕組みになっている。
また、製造に関しては商社を使った完全なるアウトソーシングに徹している。生産の為に自前の工場を持つことはリスクと考え、価格、品質、納期を満たせば、生産国にこだわらないのが当社の製造に関する方針である。とは言え、最近は中国での生産が多くなってきており、地政学的なリスクも考慮して他の東南アジア諸国への分散も検討している。
商品の価格帯に関しては、都心やターミナル駅周辺に隣接する有名デパートなどの非日常的なプライスゾーンではなくて、毎日の生活で身に纏うためのプライスゾーンとなっている。ターゲットとしては、こだわりのあるおしゃれ感覚をもっている顧客層に対して価格訴求力を高めることにより、裾野を広げる戦略を持っている。
今後の新ブランドの取り組みとしては、少子高齢化を視野に入れて、40歳以上をターゲットにした新しいブランドの構築に向けて研究チームを発足させ出店に向けた検討を開始している。
当社の強みのひとつとして忘れてはいけないことに物流の仕組みがある。通常、アパレルの小売店は、機会損失を防ぐべく店舗在庫を持っているのが普通だ。ところが、当社においては、週6回の配送により商品回転率を10回以上に保ち店舗に無駄なバックヤードを持たずに店舗在庫の圧縮を図っている。この背景には、店舗間での商品の融通が多く、コストと時間を計算すると、物流センターからの店舗への一方通行の配送がより効率が高いことがある。
強みの最後に挙げておきたいことは、当社の社員の仕事満足度の高さが顧客満足度の向上にもつながっているということである。500名にもおよぶ店長を年2回一同に集めて、ブランド別新作のファションショーを開催し、ブランドへの理解を深める努力をしている。プロダクトアウト(良いものを作る)型ではなく、マーケットイン(顧客の望むものを作る)型の発想で、小売店の売場で行う品揃えや陳列などの販売促進活動(インストアマーチャンダイジング)に徹しているところも特徴である。
「当社は計画を立てるのが非常に好きな企業である」と黒田社長は言う。今期は第3次中期事業計画最終年度である。計画策定時の今期の目標は売上200億円、経常利益は28億円であったが、すでに前期に達成済である。
次なる中期事業計画では売上高1,000億円(??)を目指して行く意気込みを黒田社長は語ってくれた。 デパートやGMSでは衣料品が売れなくてPBショップの入居促進が目につくが、独自ブランド構築で目覚しい成長を続けるポイントの躍進にはまだまだ目が離せない状況が続きそうだ。
株式会社ポイントホームページ:http://www.point.co.jp/
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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