9月下旬までのIPOが公表されている。ヘラクレス市場での受付が止まっている中でも増加ペースは落ちていない。このIPO企業の増加に大きく寄与してきていたインキュベーターに大企業がある。特定事業のカーブアウト、スピンアウト、支援など形態は様々だが、上場段階で筆頭株主に他企業の存在が確認できる銘柄の比率は低くなかった。
数字で示せば、2002年の場合は30%だった(今暦年との比較上、9月15日までの公開)。2002年をとっているのは、ITバブルが生まれてベンチャービジネスの株式公開ブームが巻き起こり、その時点で上場を目指した企業がIPOしてきたのがこの年ではなかったかと推定されるからだ。
さて、足元ではどうだろうか。この比率は22%にまで低下してきた。日本の新興市場は大企業子会社の上場による株式供給によって支えられてきたが、この動きが転機を迎えていると考えられる。
転機には二つの意味がある。一つは供給側からの判断だ。大企業にとって、株式公開が本当に戦略的に必要なことなのかどうかが問われ始めているからだ。
企業存続の長期視点を抜きに、資産や利益の分与を求める株主の意見に左右されることなく企業理念を貫くには、株式上場が有害であることはあり得ることだ。こうした考え方を重視する潮流が生まれてきている。
もう一つの転機は投資家側から見た純然たる投資判断によるものだ。2002年と今年上場する(した)子会社の平均像を見ると、子会社企業にはオーナーが創業した企業とは異なる弱点があるからだ。
弱点とは収益構造のことだ。子会社には親会社の知恵と人脈を活用できる営業上の利点がある半面、植民地としての高コスト体質も埋め込まれている。簡単に言えば社長平均年齢が高く、従業員平均年齢が高く、従って平均賃金も高い。
今年の場合で言えば子会社企業の平均賃金は年間で5.68百万円、社長創業企業は5.23百万円。2002年では、この差が2百万円にも達していた。
何よりも、公開1ヵ月後株価が平均して子会社は−8%、社長創業企業は+14%になっている。インキュベーターへの期待が転機だという所以だ。
日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり) |