今年の夏休みは北海道で過ごしました。その間、北海道では定番であるが、最近東京など北海道以外でも人気!というものを体験しました。@ジンギスカン。当地の店では、ラムすき焼き、ラムしゃぶ、ラムジンギスカンから選んで食べ放題というパターンも多いようです。ビールと合わせてとても美味い。Aスープカレー。当地では既に5〜6年前から人気とのこと。野菜が原型のまま。素材をそのまま、北海道らしい。B岩盤浴。9割方が女性客。汗がたっぷり出て気持ちいいですが、やや我慢くらべの様相も。Cパークゴルフ。広い北海道には専用コースがたくさん。良いコースはホールごとに結構変化があり面白い。普段ゴルフをやらない人、女性、シニア、子供も一緒に楽しめる。まだまだ市場は拡大中。当地ではゴルフのショートコースのパークゴルフ場への転換例もあるようですが、本州では収益の上がらない練習場はパークゴルフ場に転換すれば、周辺住人にも歓迎されそう。D駒大苫小牧。大会期間中に地元小学校のグランドで、キャッチボールに付き合った小学生の目は輝いていました。
さて、この夏、“北海道”が東京IPO読者の興味を引いたものとしては、今年二番目の北海道発のIPO企業、ここ数年間で最北のIPO企業であろう株式会社ホーブがあります。本社は上川郡東神楽町、旭川市の東隣、車で30分ほどの距離です。札幌からは二時間半程度かかりますが、旭川空港に近いので東京都心からも同じくらいの時間です。イチゴの苗の農家向け販売及びそのイチゴ果実の洋菓子メーカー向け卸売り事業を行っています。
従来のイチゴ、「とちおとめ」や「とよのか」などのブランドのイチゴは、冬〜春に限定して収穫期を迎えますが(一季成性イチゴ)、同社は夏〜秋にも収穫できる四季成性イチゴ「ペチカ」を開発し、バイオ技術を活用し優れた苗(病原菌やウイルスに汚染されていない)を大量に生産しこれを農家に販売しています。そしてこれらの農家で収穫されたイチゴを買い上げて洋菓子メーカーなどに販売しています。ここは研究開発型ファブレスメーカー的と言えるでしょうか。一方で冬〜春に収穫される従来ブランドのイチゴも市場を経由して広く農家から仕入れて、やはり洋菓子メーカーに販売しています。一年を通じて顧客にイチゴを供給しています。ここは商社あるいは食品卸というイメージです。元々イチゴの新品種の研究から苗栽培、イチゴ栽培の技術の研究からスタート、その後青果卸会社を買収して現在の事業形態となっています。
北海道産イチゴというのはあまり消費者に認知されていない気がしますが、これは現在洋菓子メーカーなどへ加工用としての販売がほとんどのためです。しかし皆さんが食べているショートケーキのイチゴ、特に夏〜秋にかけては同社生産の苗によるペチカかもしれません。この間に出回るイチゴは大半がアメリカからの輸入物だそうです。国産ペチカは味ではアメリカ産を上回るという評価が定着しているようですが、同社としては輸入物のシェアを奪うのではなく、美味しいイチゴで新たな需要創造を喚起していく方針のようです。
同社の業績を見て留意すべき点としては、イチゴの用途がケーキ用主体ということで同社の年間収益には大きな季節要因があります。ケーキの最需要期といえばクリスマス。ということで12月の売上高と利益がとても大きくなっています。同社は6月決算で12月は中間期末。中間期で年間の利益の80〜90%を出して、下期は若干の黒字という状況です。こうした季節要因と、イチゴの生産=天候による同社の業績への影響が避けられない点などがあります。
今後はペチカなど四季成性イチゴの新品種の開発は元より、一季成性イチゴの苗の量産化にも取り組んでいくとのこと。現状多くのイチゴ農家は、苗の自家増殖から植付け、栽培、出荷のプロセスを一年の大半を通じて行い休む間がない状況だそうですが、苗の育成部分をホーブが担う分業体制ができれば、生産農家の皆さんの生活も変わっていくと思われます。今後は生食の市場向けも拡大するとのことであり、皆さんの食卓にも美味しいイチゴが一年中届くことになるのではないでしょうか。
株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
(CFA協会認定証券アナリスト) |