先週末は7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議がワシントンで開催され「原油価格の高騰が世界経済の成長にとって阻害要因になる」との声明を採択して、閉幕した。
いまからちょうど20年前、私が重厚長大の造船会社の財務部門に席を置いていた頃にプラザ合意と呼ばれるG7財務相・中央銀行総裁会議がニューヨークのプラザホテルで秘密裏に開催された。
その時のG7での合意事項は、「ドル円為替レートの是正、つまり、ドル安円高の促進」であった。
当時の日本の輸出企業は輸出代金の9割以上を外貨建てで受け取っており、 私の所属した会社も例に漏れず、船やプラントの輸出代金をドル建で受領していた。
1隻1億ドルの自動車運搬船の売上がプラザ合意前日までは240億円、直後は220億円、年末には160億円にまで円建てで下がっていった。
売上の減少は、当然のことながら利益の減少を意味する。
船は受注してから引渡しまで2年間を要する。 その間に大きく為替が動けば、会社の売上に大きく影響するのである。
お陰で、私が在籍した会社は大リストラを断行し、プラザ合意から1年後には社員数を17,000人から4,000人まで減らした。
売上が円高で減っていく毎日が続き、何もできないでただ為替相場をみているだけの日々に無力感を感じていた。
財務部門にいた私は、そのリストラを実行する側にいたのだが隣の女子社員がリストラの対象になるのを見るに見かねて退職を決意し、証券界に身を投じることになった。
当時は、株式市場のことなんてまったくの素人でなにもわからずにこの世界に飛び込んだのだが、振り返って見ると、プラザ合意当時の日経平均株価は12,000円。ちょうど現在の水準であった。
円ドル為替レートは、先週末から円安方向に動いているが、当時はプラザ合意の直前の240円から年末には160円まで大幅な円高となった。
もしプラザ合意当時に日経平均株価を買っていたとしたら、円ベースでは20年後も変わらないが、ドル建ての投資家は為替差益で2倍のパフォーマンスとなっている。
これから20年後、日経平均が仮に2倍になったとしても、為替が大きく円安に振れていれば、ドル建ての投資家にメリットは出ないはずだ。
過去20年間にわたり継続して日本株を買いつづけてきた外国人投資家であるが、少子高齢化が進み経済力(国力)が低下する日本をまだまだ買いつづけるのだろうか。
グローバル企業はまだしも、内需関連企業には一抹の不安を感じざるを得ないのではないだろうか。
とは言え、20年先のことを考えて生きている人はほとんどいないはずである。 目先を考えれば、株価はすでにいい水準まで買い進まれており短期的な調整は避けられないとしても、弱気になる材料は存在しない。
長期的な視点でみればネガティブ要因となる円安も短期的には輸出企業の円建ての売上増につながりフォローウィンドとなりそうだ。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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