ジャスダックの時価総額が9月16日に15兆円載せとなった。2000年の同じ9月下旬にもこの水準を記録した。このときと異なるのは、買い上げている主体だ。2000年の時、個人は買い金額で4割、買い株数で5割の比重しか占めていなかった。ところが、足元の状態は個人の買い金額が6割、買い株数は8割になっている。完全に個人が領導する市場になっている。この結果、2000年の時は平均売買単価が2000円台だったが、直近は300円台。個人だけに限って言えば200円台になってきている。お小遣いでのマネーゲームが市場に持ち込まれた格好だが、個人の不満を爆発させない配慮も必要となってきた。
小型銘柄を物色する動きは日本に限った動きではない。米国の市場でも、中小型株で構成されるラッセル2000指数が9月に入ってから急伸している。出遅れていたセクターへの物色買いが入っているからだ。当然のことながら、景気回復局面では信用リスクが低下するので、小型株への買い余地は高まる。ハリケーンや原油高があるにも拘わらず、FRBが追加利上げに踏み切った背景を忖度するに、国民の景気高揚気分は強い。おそらく、住宅価格の暴落が始まるまで、その状況が続く。
米国が最終消費地となっている日本の貿易立国構造を考えると、その景気高揚気分が余資を持っている層に伝わってきたと言える。財務大臣が、金融危機を脱したと宣言したことからも分かるように、銀行の不良債権処理はあらかた終わった。つまり、新たな不良債権を作る条件は整った。信用は膨張に入った。低位の小型株で失敗しても傷が浅いと考える個人がネット証券によるシステム整備のお陰で激増し、実際にリスクマネーを投じてきた。
この動きはベンチャー・ビジネスバブルとも言えるが、流動性が高いので住宅や土地へのバブルよりも失敗した際の処理は早い。その点で、動きは危なっかしいが構造は健全だ。しかも、傾向は世界的。一旦動き出せば制御不能となるのが、オカネの世界の歴史だ。
つまり、IPOの中身を見もしないで買う投資家はさらに増える。買えない不満の抑制には、証券会社へ新規上場株の抽選割当制度を透明化させようとする規制は当然の動きだ。そんな規制の登場は、IPO人気持続のシグナルだ。
日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり)
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