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新規公開株式情報の東京IPO
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コーヒーブレイク 〜企業アクションと株価〜
  株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史(CFA協会認定証券アナリスト)
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来年の1月以降、株式分割を実施する企業は新株効力発生日を権利確定日の翌日とすることが可能となります(正式には1月4日を権利確定日とし1月5日を効力発生日とするものから)。これは証券保管振替機構(ほふり)に預け入れている株式についてのみの話であり、現物でお持ちの株式については従来どおり権利確定から効力発生まで50日程度かかります。しかし発行済株式の約7割は「ほふり」が保管しているので、かなりの投資家は権利確定の翌日から子株の売買が可能となります。

過去数年間市場において株式分割が短期的に株価を動かす大きな材料となっていました。こうした状況を受けて、今年3月に各取引所は上場企業に対して「大幅な株式分割の実施に際してのお願い」という要請を行いました。その結果、

  • 比率が1:5を超える分割
  • 分割後の1投資単位が1万円を下回るような分割
  • CB発行後6ヶ月以内の分割

は実質的にできない状態になりました。また過去は任意であった株式分割時に利用できる新株の発行日決済取引が、1:1.5以上の分割の場合、取引所の要請でほとんどの場合実施されています。こうした取組みにより、株式分割が大きく株価を動かすような状況はあまり見られなっていますが、来年からは益々そうした状況が定着するものと思われます。

 ただし例年12月末を権利確定とする分割は12月決算企業を中心にかなり実施されています。12月末を権利確定とすると新株の効力発生は来年の2月20日となります。従って1月以降を権利確定日として分割を実施する銘柄のほうが早く効力発生日を迎えるという逆転現象が生じます。果たして12月決算企業で分割を考えている企業がどう対応するのか少し気になるところですが、つい先日12月末を基準とする分割をリリースした企業が1社出ました。

ほかに企業のアクションが株価を動かすものといえば、ファイナンスがあります。公募増資、CB、最近はMSCB。株価にインパクトがある順でいえば、公募増資⇒MSCB⇒CB&第三者割当増資、といった順でしょうか。最近物議をかもすMSCBは、短期間で株式に転換されて証券会社から投資家に譲渡されるので性格的には公募増資に近いものです。自己資本の充実のため本来なら公募増資をしたいが、種々の要因でこれを避けたい、という企業が実施しています。企業に伺うとMSCBの選択理由としては、

  • 当期の利益が少ない企業からすると、発行手数料が発生しないので当期損益への影響がほとんどない点が魅力的
  • 通常のCBに比較すると速やかに株式に転換され自己資本が充実する
  • 株式転換後の保有先についてある程度会社の意向が反映される(?)
  • 株式として市場へ売却されるタイミングについてもある程度会社の意向が反映される(?)

などがあるようです。

 上場企業の中には公募増資のリリースから価格決定までの間に、市場全体の市況悪化や想定以上の投資家のネガティブ・リアクションに直面し、株価が下がりつづけ調達額が当初の目論見よりも大きく減ってしまったという経験をした企業は多数あります。中には公募自体を中止というケースもあります。

こうした経験を目の当たりにした企業にとっては、MSCBは使い勝手が良いものに見えると思います。転換価格の下方修正条項で既存株主の利益を損なうリスクは承知しているものの、業績堅調で調達資金も前向きな投資に充てることで業績を伸ばす自信はある。そのためにできるだけ大きな調達をしたいという企業は、中期的な株価の下落を心配していないものの、アナウンス後の一瞬の行き過ぎた株価の下落は気になるところ。公募増資の場合、価格決定までの間に機関投資家は需要調査ということで会社の話を直接聞く機会を与えられます。また潜在的な買い手となる大口個人投資家には、目論見書を片手に証券会社営業マンが会社の成長性をアピールしてくれます。しかし短期的な株価の変動には大きな影響力を持つ既存の株主、特に個人のネット投資家には有効な情報提供がほとんどありません。

 株式分割における“魔の50日間”は消滅に向かっていますが、公募増資の“魔の10日間”は当分変わりません。これを解消して、企業にMSCBでなく公募増資での調達を促すには、ネットを活用して個人投資家・機関投資家に公平にプレヒアリングを行う機会を提供することが必要ではないでしょうか。

株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
(CFA協会認定証券アナリスト)

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