「日本のネット企業のビジネスは、前にどこかで聞いたことがあるものばかりだね。」先日、米国から日本の企業訪問にやってきた機関投資家のアテンドをした際の言葉です。彼はECやソフトウェア関係の企業を2週間ほどで多数訪問したようで、最近世間を賑わす大手EC企業もその1つだったようです。彼は米国から飛行機で日本に来ましたが、実はタイムマシンで過去の世界にやってきた感じがしたのかもしれません。日本のインターネット企業の創業者には米国留学経験者がかなりいますが、彼等は逆にタイムマシンで未来へ行ったようなものかも知れません。ただし、彼はまた日本のモバイル関連ビジネスは米国に先行していると言っていました。それと余談ですが今回が初の日本訪問で、街の清潔さ、安全さ、多様で魅力的な風景にいたく感激していました。
米国の話となりましたので、今回は米国のIPO事情について少々。米国のIPOの数はITブームの99年486社、2000年406社と大量IPO。しかし翌年以降ITバブル崩壊の余波で01年83社、02年70社、03年68社と低迷。しかし04年から回復し同年216社、そして05年は11月16日までで167社がIPOしています。こうした情報はIPO情報専門サイトから見ることができます。(参考 IPOHomehttp://www.ipohome.com/default.asp )
このサイトは基本的に東京IPOと同じように、IPO銘柄の公開情報をまとめて提供しているポータルサイトです。ただし、あちらの方が先輩です。92年に創業しIPOに関するレポート提供を開始、96年にポータルサイト運営を開始しています。大きな特長はこの会社が、自社のIPO株に関する調査を元に、自らIPO株に投資するファンドの運営を行っていることです。個人投資家にIPO銘柄への投資機会を提供するため、と同社は述べています。
IPO株への投資については、日米双方において個人投資家は機関投資家に比べて不利な環境に置かれています。日本においては、機関投資家は上場承認直後のプレヒアリング期間中に会社経営者との個別面談の機会を得るか、上場前説明会に参加して直接説明を聞くことができます。一方、個人投資家は目論見書を見るだけで投資判断をしなければなりません。さらに購入という判断をした場合でも、公募・売出株式の割当においては大口の機関投資家は優遇されています。
こうした状況は米国でも似たようなものですが、これを改善する動きが見られます。今年の夏、米国SECは新株発行(IPOや上場企業の公募増資)の際の発行手続きに関するルール変更を行いました(施行は今年12月以降)。その中の1つは企業からと投資家への情報提供、コミュニケーション方法のルールを実態に即して改善するものでした。大きな点としては、新株発行時に機関投資家向けに行われるロードショーをインターネットですべての投資家が閲覧できるようにする、というものです。これが実現すれば個人投資家も機関投資家と同様に、企業経営者のプレゼンテーションを聞いた上で投資判断をすることが可能となります。そしてご紹介したIPOファンドの存在。このファンドはIPO銘柄に投資したい個人投資家のお金を預かり、その代表としてロードショーに参加、会社と直接ミーティングします。そして購入と判断すれば大口の機関投資家として、個人投資家よりは高い確率でまとまった株数の割り当てを受けることができます。
日本でもIPO時のロードショーのインターネットによる個人投資家への開放と、IPO銘柄専門に投資をするファンドができても良いと思います。それを実現するのは読者の皆さんの支持を受ける東京IPOかも・・・
株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
(CFA協会認定証券アナリスト)
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