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新規公開株式情報の東京IPO
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新興市場はクライマックスが近い。『業績変化』に伴う『認識の変化』
    にこそ注目せよ。
  株式会社ティー・アイ・ダヴリュ ジェネラルパートナー 藤根靖晃
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新興市場の株価上昇が止まらない。ジャスダックの予想PERは先週末に49.45倍となり、新興市場への上場株は猫も杓子も買われているという状況に陥っており、割安銘柄を探すことが困難になりつつある。2000年初めのITバブルを連想させるような動きとなっており、クライマックスが近いことを感じさせる。

経済環境をとってみるならば、米利上げの打ち止め観測が広がることによるドル安・円高は、原材料を含む輸入品価格の下落を通じて消費者物価のプラス基調に影響を及ぼす可能性もあり、量的緩和解除のタイミングに影響を与えることも考えられる。更なる円高の進行は望ましくないだけに、長期金利上昇は限定的に留まる可能性も強く、株式市場への資金流入はまだ続く可能性がある。しかしながら、景気回復局面においてはマクロ景気動向の恩恵を大企業の方が受けやすく、また、有効求人倍率が1.0に迫る状況において(既に首都圏・東海地方では1.0を超えているが)、人材不足が中堅・ベンチャー企業の成長抑制に働く可能性もあり、楽観視は危険である。

日経平均株価に於いては、2006年度の企業業績の拡大(10〜15%の増益率)と経済環境の好転による投資リスク(r)の低減によるPERの上昇余地(20→25倍)を鑑みれば20,000円前後という見通しも可能ではあるが、新興市場に於いては調整を視野に置いておく必要があるだろう。

さて、話は変るが先週に私も一部執筆に加わった「ソニー病」(洋泉社)というペーパーバック本が書店で販売された。出版社の方によれば、売れ行きはまずまずであるそうだ。ブランド価値の低下が言われ続けて久しいが、改めて日本人の“ソニー”という会社への関心は非常に根強くあるように思われる。

ソニーの株価もまた中間決算発表後の11月から出遅れ銘柄物色の流れに乗って約2割の上昇をみている。かく言う私も昨年12月15日に発売された「ダイヤモンド株データブック厳選銘柄版」の特集企画“スゴいプロ10人が選ぶ特選銘柄”の中で敢えて注目企業の筆頭に挙げた。誌面では十分に説明できていなかったので説明を補足するとともに今後の株価シナリオの展開予想を述べておきたい。

間もなく発表されるソニーの第3四半期決算は、やや強含みというのがコンセンサスであり、中間決算発表後2ヵ月間でアナリストの業績予想は徐々に上方修正されつつある。強含みの要因は、金融関連事業の好調と米国での薄型TVの販売好調。ただし、これまで好調であった映画・音楽などコンテンツビジネスがやや不振である。全体業績を鑑みるならば市場が期待しているほどの“強含み”とはならない可能性もあるが、エレクトロニクス事業の改善傾向が確認されれば株価に対するマイナス・インパクトは限定的となるだろう。第3四半期決算発表後は、マーケットの関心は来期に向かってゆくことから、ブルーレイディスク、PS3、など大型商品発売への期待感が醸成されてゆく。

昨年末時点でのアナリストのレーティングは、買い2人、中立10人、やや弱気・弱気3人という分布であり、“強気”のアナリストは少ない。これは言い換えれば、業績回復方向が確認されれば、強気に転じるアナリストが少なからず出てくる可能性を示している。それに個人や外国人の買いによる株価上昇が伴えば、これまでソニーを売り続けていた日本の機関投資家は“持たざるリスクの回避”から動き出す。そうした機関投資家の動きが生じれば、それに便乗して“強気”に転じるアナリストも必ず出現する。それが更なる株価上昇を齎すならば、“ヨワキ”を頑強に主張し続けられるほど腰の据わったアナリストは何人も残らないだろう(何度かコラムで取り上げたことがあるが、証券会社アナリストや大手機関投資家ファンドマネージャーは、アナリストやファンドマネージャーであるより以前に会社員である)。その時に生じるのが、「認識の変化」、「意識の変化」である。

PERの水準を決定づけるのは必ずしもDCFに代表される理論株価だけではない。「認識」こそが最も重要である。端的な例は、現在の株式市場である。日本経済の見通しが果たしてこの1年間に40%も変化しただろうか?

業績悪化、株価下落、経営陣の交代。これらが齎したのは「ソニー神話」の崩壊と負け組みのレッテルという「認識の変化」である。戦略的な失敗は大きいものの、依然としてソニーは、フォーマット提唱が出来る数少ない世界的なエレクトロニクス企業であり、ハードとソフトを絡めたビジネスモデルの構築が出来る稀有な存在である。中期的な業績見通しが急に大きく変わるわけではないが、株価上昇が起爆となり投資家の「認識の変化」(回復)が引き起こされる。

“出遅れ物色”の一環に過ぎない、と言っている輩こそが、実は最も“出遅れ”である可能性もある。1年後に乞うご期待。

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