ブログでも書きつづけたが、今回の背景は行過ぎた資本主義制度にあるのではないだろうか。
バブル崩壊後、1997年の山一證券に端を発した金融機関の破綻の連鎖により銀行による信用創造構造が崩れ、世に言うところの「貸し渋り」が横行し、その後はデフレの影響もあって銀行が事業会社に金融を行うという与信構造が完全に崩れ去っていたのは読者の皆さんもよくご存知のことである。
1990年代後半において銀行から与信を受けられなくなったIT関連のベンチャー企業に対して、信用創造を行ったのはベンチャーキャピタルであった。そして忘れてはいけないのは、ベンチャーキャピタルのイグジット機能を果たす傍らでITベンチャー企業に更なる資金提供を行ったのが2000年に創設された新興株式市場である。
東証においてはマザーズ、大証においては米国ナスダック社との協業でナスダック・ジャパン(現、ヘラクレス)が2000年に登場した。
筆者の理解するところでは、マザーズ、ヘラクレスともに上場のハードルが低いはずである。東証のHPで上場の形式基準を東証2部上場と比較してみてもかなり緩やかになっている。
→ http://www.tse.or.jp/cash/stock/stlisting_e.html
証券取引所にしてみれば、間接金融(銀行)制度が手を出しにくい企業への資金提供を実現したのが新興株式市場であり、いわゆる多産多死も已む無しという前提で証券市場を使って資金調達を許可しているにすぎないわけである。
その企業群の1社であるライブドアは時価総額が1兆円に迫り、東証1部上場企業も舌を巻くような規模の資金調達を何度も繰り返してきたわけである。お陰でライブドアの自己資本は2,000億円に迫り、押しも押されぬ大企業の仲間入りを果たしたのである。
ライブドアのIPOは2000年4月。東証マザーズ市場がスタートして間もない頃である。新興株式市場の取引所間競争が激しかった時期でもあり、たぶん新規上場の審査としては一番緩やかな時期ではなかったかと思われる。
昨今は非常に厳しく審査される内部管理、コーポレートガバナンス、情報開示体制がライブドアにおいてはすべて未整備なままに証券市場を我が物顔で闊歩していたわけである。
今回の事件の顛末がはっきりするまでにはまだまだ時間がかかるだろうが、ライブドア関連株式で大きな損失を被る投資家が続出しているのは間違いない事実である。この責任は一体誰にあるのか?
それは明らかに市場運営者である証券取引所であると筆者は考えている。
紙幣と同じ価値をもつ株券を印刷する権利を与えた証券取引所は今回の事件をただ単にライブドア固有の問題として片付けてしまってはいけないはずである。
取引所は上場したらその後はノーチェックではなく、新興市場上場企業には、
(1)社外取締役制度の義務
(2)上場後の定期的な経営者面談
(3)ファイナンス時の審査
(4)監査法人の定期的な変更
等(他にもアイデアはあるだろうが・・・)の第三者によるチェックが適宜行われるルール導入を考えてみるべきではないだろうか。
個人投資家の証券市場への参入はまだ始まったばかりである。この流れを止めることのないように証券取引所には新興株式市場の信頼回復と維持に全力投球をお願いしたい。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com |