世に言う営業代行・業務請負の会社で成功した会社は上場企業にもいくつもある。筆者の知る限りにおいてはどこの会社に言っても、体育会系のノリで元気がよく、大声で挨拶をするというのが当たり前で、まさに「猛烈営業」というのにふさわしい雰囲気が会社に漂っているものである。
今回インタビューにご協力いただいたフリード社もビジネスモデルを見る限りにおいては
「猛烈営業」の会社だというイメージで訪問した。受付で担当の方に内線で到着を告げて稲垣社長をお待ちしていると、出入りする社員の方々が「いらっしゃいませ」と声を掛けてくださるのだが、非常にソフトな感じで抱いていたイメージとちょっと違った。
まずは本題に入る前にフリード社のビジネス構造について説明していこう。
当社の事業は通信回線取次事業と情報通信機器販売事業の2本柱となっている。
通信回線取次事業においては、マイラインや直収電話、ブロードバンド通信サービスを始めとした、NTT西日本・東日本、NTTコミュニケーションズ、日本テレコムおよびフュージョンコミュニケーションズの固定電話回線等各種通信サービスの取次を主体としている。
おもしろいのは営業の形態が3つに分けられていることで、@自社の営業活動、A営業請負・業務請負B同業他社への営業支援・コンサルティング 等になっていることである。また、通信キャリアとは直接の取引を行わず、通信商社であるテレパーク社を介しており、特定の通信キャリアに限定されない営業活動ができるような仕組みを持っている。営業収益は取り次ぎ手数料がベース。
情報通信機器販売事業においては、事務機器メーカーから仕入れた情報通信機器(ビジネスホンやデジタル複合機等)をリースの仕組みを使って中小企業に販売する仕組みとなっている。また当社の自社ブランドIPフォン「フリードフォン」を組み合わせる企画提案で、顧客の通信コストの削減を図るという差別化戦略をとっている。営業収益は売買差益。
ここまで読まれた読者の皆さんは「何の変哲もない営業の会社」と思われるだろう。筆者も目論見書を読んでから訪問したのだが、稲垣社長のお話をお伺いするまでは正直その辺にいくつもある会社のひとつだと言う印象が強かった。
ところがそうでないことが話し始めて10分程度でわかった。
まず稲垣社長の経歴。社会人としての最初に職場は建設会社で非常に古い体質の会社であったそうだ。変化を求めてフォーバル社に転職、その後トップ社を経て1995年に当社を設立した。フォーバル社とトップ社に在籍した頃はセールスマンとして事務機器を売りまくったそうだ。
そんな営業の会社にいて気がついた事があったそうだ。
実力主義といいながらも、それは成果主義、言葉を変えれば歩合制の報酬体系であった。
日本はすでに高度成長のモデルは終焉したにもかかわらず、とにかく売ることだけにすべての精力を傾けている社員や同僚を見ていて、人間モデルが弱くなってきていると感じた。
当社において魅力的な人材とは、心、技、体に人間力を兼ね備えた人材だそうだ。人間力とは何か? 子供っぽさ、と、大人らしさをもった人間。例えば、巨人の元長島監督のような人物で、非常に魅力的だが、会社人間としては受け入れられにくいタイプの人物像だが、人間力は非常に高いものを持っている。
当社のホームページの経営方針の中に「人の強み」という項目がある。そこで、「ビジネスは自己責任と誇りの中でするものである」と徹底されている、と書かれている。つまり売っているのは性能の高い商品やサービスであっても、お客様に「君と出会ってよかった」(筆者は、「君に会ったから買うことにした」と解釈する)と言っていただけるように「知識の集積と行動」を提供できる人間になることが当社においては実力を持つ社員と評価される。
当社のビジネスの根幹となる考え方は、営業ではなくてコンセルジュサービス。つまり、企業の総務部長の代行業者として、物品の購入のコンペ代行などを行う会社と位置付けてもらいたい。
営業スタッフはデパートの外商のようにチャンスが来るまで無料でコンサルティングを提供しつづけることで、営業スタッフ自身の時間の提供が顧客の対価となって次の注文につながってくると考えるそうだ。
当社の営業のやり方は、通信回線などの営業で新規顧客の開拓を行い、同じ顧客に情報通信機器の販売でより強固な関係を構築していく。最終的に一人の営業スタッフが情報通信機器を導入していただけるお客様を200件開拓すれば、6年(リース期間)に一度の割合でリプレイスがかかり、年間40件程度、月間3〜4件程度の販売サイクルができあがる。それによって一人の営業スタッフが毎月100万円以上の粗利を稼ぐことができるようになる。
このような営業の仕組みで、売上成長率50%を最低でも3年間は持続し、利益率も向上すると稲垣社長は見込んでいる。
当社は現在の営業基盤が大阪で過半を占めるが、今回の上場を機に知名度を高め、首都圏での売上比率の向上を狙っていきたいそうだ。
情報通信分野におけるハードウェアの進化のスピードはどんどん速くなり、営業の現場においては、その価値を正確にお客様に伝えることなく物を売る風潮がある。当社においては、お客様との深い人間関係の構築により「人間力」を武器とした営業の手法をとっており、殺伐とした現代社会には忘れ去れていた何かを思い起こさせてくるものがある。
フリードが目指す『人間力』のある営業スタッフがあなたの会社を訪れたときは、どこにその営業スタッフの『人間力』があるのかを見極めていただきたい。きっと6年に一度の為にあなたの会社のコンセルジュになってくれることであろう。
フリードホームページ http://www.fread.co.jp/
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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