日本航空(9205)が内紛で大きく揺れている。
いまさら解説するまでもないと思うが、簡単にまとめておこう。
事の発端は、2月10日に日航グループの取締役4人が部長クラスらの50名の署名を持って、新町社長ら代表取締役3人の総退陣を求めたことに始まる。その後、部課長クラス中心に署名は230名まで広がったと報道されている。
その内紛も副社長1名と退陣を要求したグループ会社の取締役2名の退任で幕引きが行われようとしている。
話の視点が変わるが、先日の出張で福岡から羽田に戻る飛行機の選択で思わず迷いが出てJALに乗るのをやめようかと思った。
思い起こせば、20年前の羽田着陸時の逆噴射事故、金属疲労(整備ミス)で御巣鷹山の惨事、そしてここのところの安全性を欠く不祥事の発生で、とても顧客の信頼を得ているとは言い難い。
社員の危機感の裏返しとして、今回の内紛劇が起こったのではないかと思われるが、少し矛先が違うような気がしてならない。
JALグループは2005年〜2007年の中期経営計画(HP掲載)で人件費効率化を謳っている。各年度ごとに
2005年:170億円
2006年:245億円
2007年:345億円
の削減を行うよう書かれている。
そのアクションプランとして、従業員給料の10%カットが盛り込まれているようだ。
JAL労働組合は、給料カットの協議の前提として、「国際線の黒字化」「安全運行」「経営責任の明確化」を3条件としている。
その前提となる経営責任の明確化で社長の交代が今回退陣要求という形で出てきたのである。
しかしながら、新町社長が経営責任を取ろうが取るまいが、JALの役職員は厳しい経営環境に立ち向かっていかねばならない。トップが替わったからといって、社員の日々の業務は何が変わるというのだろうか?
私見ではあるが、このような労使対立や経営陣内部に争いのある会社での再生は非常に厳しいと言わざるをえない。
今回の騒動について何らかのコメントがあるかと、JALのHPを見たが、何の記述も見当たらない。顧客離れが一層加速することは間違いないだろう。
逆境にある企業の経営者にとっての会社運営とは、「顧客→社員→債権者→株主」の順に大切にしなければいけないはずである。
顧客へのメッセージもなく、社員との対話も行わず、債権者である銀行は傍観、株主へも中期ビジョンの提示もない。
JALグループで仕事をしている社員の皆さんに申し上げたい。もし、このまま経営合理化に反対しているなら10%程度の給料カットで済まないリストラクチャリングが近い将来待ち受けている可能性がどんどん高くなる事を。
株主構成を見ても、もはや親方日の丸の大臣名義の株式などまったく存在しない。
時価総額6,000億円の現状では買収される危機はないかもしれないが、株価急落となれば労使が好むと好まざるに係わらず新しい大株主の誕生し、労使が同じ境遇なることも十分ありうる話である。
ここで最も重要なことは、もう一度、「Customer First !!」の精神を取り戻すことではないだろうか。 さもなければ、JALが日の丸のナショナルフラッグを掲げる存在ではなくなる日も近いだろう。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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