「店頭」とか「成長」などと命名されたファンドの運用者には受難の月が終わろうとしている。「基準価格が大きく変動致しましたのでお知らせいたします」と題する「受益者の皆様へ」の通知が一再ならずに出された。
この種の「お知らせ」や運用報告書に記載された結論は「企業業績を反映しない株価下落局面は、むしろ革新的な高成長企業を魅力的な株価水準で組入れるチャンス」(安田投信のグローイング・アップ)や、「今回の株価下落により割安感の強まったと判断した銘柄の買い付けを継続する方針です」(インベスコ店頭・成長オープン)などだ。要するに、狼狽する根拠は何もない。むしろパフォーマンスを底上げするチャンスだとファンド・マネージャーは見ているわけだ。
この判断が正しいのかどうかの結論は、時間が証明してくれる。事実としては、グローイング・アップもインベスコ店頭も2月8日につけた4万円台の基準価格を回復できない状態にある。また、インベスコの基準価格はグローイング・アップを逆転した。
この2ファンドを2月17日現在の運用報告書で比較すると、グローイング・アップの上位組入れには新規公開銘柄が目立っている。この点で、最近公開された銘柄の下げが大きいことが推定される。
この傾向は新規公開市場へも影響を及ぼしていると言える。公募価格と比較した初値価格倍率が低下してきたから。しかし、だからといって公募価格を割る市場価格がついている状態でもない。
新興市場の株価を指数で代用するとすれば日経ジャスダック平均もヘラクレス指数も個人投資家の買い金額と連動して動いている。指数が上がっていたのは個人の資金が流入していたからであり、下げたのは個人資金が逃避したからなのだ。ところが、ジャスダックもヘラクレスも、週間統計を見ると逃避感は感じられない。平均売買単価が目に見えて下がった訳ではないし、市場に占める個人の比重でも目立った変化を見出せない。
「事件」が起きて下げても、市場参加者は直前では身奇麗だったはずの、成長期待感が大きい新規公開を注目する姿勢を崩していない。プロと同じ考え方を市場参加者の多数はしている、と思える。
日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり) |