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編集長のジャストフィーリング 〜個人株主のライブドアへの損害賠償請求〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

週末の新聞に標題に関する記事があった。

「ライブドア株主被害弁護団」なる組織が2月21日に立ち上げられ、複数の弁護士グループが原告を募集しているようだ。

同グループのホームページを見ると、「私達は、株式取引の価格変動についての見込みちがいによる損害を回復することを目指してはいません。このような損害があっても裁判での被害回復はできません。このような損害は自己責任の範疇に属するもので、私達は株価変動の損害賠償を問題とするわけではありません。」と書いている。

問題としているのは、「株価が下落したことが損害というのではなく、ホリエモンらによる不公正な方法での虚偽情報、いわばイカサマの情報による株価を問題としています」と訴えかけている。

確かに水増しされた利益によって高株価が付いたことは紛れも無い事実であるが、地検の強制捜査が入る直前の時価総額8,000億円の妥当性に関する検証も必要ではないだろうか。

筆者が個人投資家向けのセミナーで講演すると参加された個人投資家からライブドアの今後の株価はどうでしょうか?という質問をよく受けた。私の答えはいつも同じで「ライブドアのPERは何倍ですか?東証の平均は20倍です。よく考えてから買うかどうかの判断をしたほうがいいですよ」と返事をしていた。

弁護団は「株価は変動するもの」と言っているが、個人株主がどうしてその株価で購入したのかについてはまったく触れていない。ただ単に、強制捜査前の株価と現在の株価を比較して、株価が下落した分を損害と見積もっている。

昨年11月17日に発表された決算短信で、2006年9月期の連結ベース当期利益の予想は160億円となっている。 時価総額が8,000億円とするならばPER50倍である。インターネット関連銘柄であればPER100倍も不思議ではないが、市場平均値よりは相当高い評価を得ているわけである。

もし弁護団がPER50倍の株価に対して今期の予想利益水準との関連で妥当性を見出しているとするならば、強制捜査前の株価700円台の水準について妥当と考えるロジックを説明する必要もあるだろう。

世の中には、業績予想を突然下方に修正したり、黒字予想から大赤字に転落する企業も多数存在する。これらの企業の株価は通常大きく下方に修正される。場合によっては何分の一にまで株価が下落することも稀ではない。

だからと言って、弁護士が立ち上がって損害賠償責任を追及したという事例はほとんどお目にかからない。また、そのような大幅な利益の修正が意図的であったのか無かったかも検証されていないケースがほとんどである。

光通信の株価は2000年2月に24万1,000円の高値を付けた後、2001年には1,000円を割る水準まで下落した。なんと株価は1年数ヶ月で「241分の1」になってしまったのである。

筆者はライブドアの経理処理を支援するつもりはないが、株式投資というものは価格変動リスクが存在しているのは当然であり、株価の基礎となっている企業の利益は経営環境の大きな変化によって如何様にも変化するものである。ましてや市場を支配するセンシメント次第で同じ利益水準でも株価の水準は大きく上下するものである。

株価下落の理由は異なっていても、株価とはそのようなものであることを個人投資家の皆さんは肝に銘じるべきであろう。

筆者の邪推であるが、光通信株式で大きな痛手を被った個人投資家の方々は、今回のライブドアで2度目の被害者になられた方は少ないのではないだろうか。

返還される可能性の少ない争議に係わっているよりはすでに過去のものとして今後の投資に役立てることを考えるべきである。

 

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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