配当性向とは当期の利益から配当に回す金額の割合を意味する。
計算式は
配当性向=配当金総額÷当期純利益
となっている。
新規上場企業は配当を実施しない企業も相当数存在する。
そのような新規上場企業の経営者の言い訳は、「利益は内部留保に努め、株主の皆様には株価で還元したい」という紋切り型の答えが多い。
経営者の中には、一単元あたりの配当金額が極度に少ないがゆえに、これくらいの配当では株主に満足していただけないので、もう少し配当の出せる利益水準になるまでは配当を実施しないという人もいる。
資金需要が旺盛な設備型ビジネスを営まれている企業は、銀行借入が多いので配当に回す資金が無い、とおっしゃる経営者もおられる。
また経営者自身の株式持分比率が多く、個人の税務対策でメリットが出ないので持分が減るまでは配当したくない人もいるだろう。
残念ながら、筆者はこれらの経営者の言い訳には賛同できない。
財務の視点から見れば、株式発行も銀行借入も資金調達の手段にすぎない。
当然のことながら銀行借入には金利が付いてくる。この金利を支払わない、という経営者はいないだろう。なぜならそれはデフォルトを意味するに他ならないからだ。企業経営は継続できなくなってしまうのである。
でも、配当を払わないからといって、デフォルトにはならない。
そのしっぺ返しは株価に反映されるかもしれないが、株価は利益を基準に動くので利益を出している限りは配当の有無はあまり意味を持たない。
しかしながら、株式市場で資金を調達した経営者の物事の考え方として、配当を出すということは非常に重要なことを意味する。
なぜなら会社の税引き後の利益は株主に配分されるべき性質のものであるからだ。だから機関投資家はROEを非常に重要視する。株主資本に対する利益率が高ければそれだけ配分可能額も高くなるからである。
そのような理由から、新規上場された企業の経営者は、何を置いても株主還元の第一番に「配当」を掲げていただきたい。
仮に配当額を提示できないにしても、配当性向、つまり得られた利益のうち、どれくらいを株主に還元するかの方向性くらいは掲げていただきたい。
さもなくば銀行借入に対する利息を払うことすら否定していることに近いと認識しなければならない。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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