今日から名実共に新年度入りとなった。
朝方、市場がスタートする直前に発表された日銀短観(1−3月)では、企業の景況感を表す業況判断指数が大企業製造業でプラス20となり、前回の12月調査に比べると1ポイント低下した。
にもかかわらず株式市場は活況を呈し、終わってみれば日経平均株価は273.65円高、TOPIXは26.48ポイント高で1,750ポイントの壁を抜いてきた。期末の6連騰に続いて今日も高値近辺で引けた。まさに満開の桜のごとく株価ボードは前日比プラス表示の真っ赤に染まった銘柄が多かった。
さて、IPO市場であるが、1月〜3月までの今年第一四半期の総括を行いたい。
IPOの件数は44件、昨年比で+9件となっている。内訳としては以下のようになっている。
2005年 2006年
JASDAQ 21社 17社
東証マザーズ 3社 7社
東証2部 2社 9社
東証1部 2社 5社
大証2部 0社 1社
大証ヘラクレス 5社 3社
名証S 1社 0社
名証2部 0社 1社
福証Q 1社 1社
傾向としては、東証1部、2部銘柄が多く、いわゆる新興市場のIPOはやや低調に終わった。景気の良さに後押しされる形で、オールドエコノミー企業の業績が大幅に改善し、東証1・2部銘柄が多くなったと推測される。中でも証券会社が2社、旧第二地銀が2社新規上場し、日銀の金融引締めの前に自己資本の増強を狙ったものと見られる。
1月〜3月の資金調達額を見ると、2005年は35件で2,461億円、2006年は44件で2,470億円と今年のIPO1件あたりの調達額は小粒化していると言えよう。
次に1月〜3月の初値騰落率であるが、
2005年 107.5% (初値倍率2.07倍)
2006年 88.2% (初値倍率1.88倍)
と昨年に比べて若干低く止まっている。
ところが良く中味を見ると、今年は初値騰落率が2極化しており、上場日から二日目、三日目にやっと値が付く銘柄がある反面、上場日の9時半頃までに初値がつく銘柄も多数見られ人気も2分されている。
読者の皆さんにとって重要な上場後の値動きであるが、初値と3月31日の終値を比較すると、騰落率は+8.3%と日経平均株価が年初来高値を取っている状況からすれば、なんとも不甲斐ないパフォーマンスである。
では、なぜこのようにIPO銘柄のパフォーマンスが悪いのか?ということであるが、それは個人投資家の皆さんの懐具合を自らが確認すればわかることである。
1月中旬にライブドアショックがあったものの大型株は短期の調整で終えたが、東証マザーズ、大証ヘラクレスともに戻りが非常に鈍くなっている。その背景には、IPO市場を支えてきた個人投資家のマネーが昨年末から年初にかけての新興市場の大相場で高値掴みしてしまったとみる。信用取引に限らず、現物でも保有していたIPO銘柄がほとんど評価損となり身動きが取れない状況が長引いていると考えられる。
この状況がいつまで続くのか?
市場参加者が個人投資家だけでなく機関投資家にまで広がるまでは値動きが鈍いと考えておいたほうがいいだろう。
中小型株式を組み入れる投資信託などは、3月決算の数値と来期の業績予想を見ながら動き出す。業績の上方修正などが発表されれば、決算発表を待たずとも食指を動かすファンドも出てくることだろう。
3月のブログでも何度か書いたが、PERが低くて、配当利回り(権利はすでに落ちています)でみても割安感のある銘柄を丹念に拾っていくのが勝利への近道である。特に東証2部銘柄をじっくりと吟味するといいかもしれない。
今後のIPO市場であるが、4月のIPOは20件、昨年比で+8件。大証ヘラクレス銘柄が8件とヘラクレス市場が復活してきた。今年から導入された売買システムが順調に稼動していることで、昨年から待ったをかけられていた銘柄が一気に上場承認されたとみる。
5月以降は例年どおりIPOの件数が極端に少なくなるとみているので、4月中旬にはIPO市場も好転するのではないだろうか。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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