4月最後のIPOであった翻訳センター(2483 大証H)の初値は5月に持ち越しとなり、筆者の予想通り公開価格35万円に対して初値103万円と初値騰落率は2.94倍であった。そして初値がついた後も買い進まれて、本日の終値は121万円と公開価格の3.45倍で引けた。
4月のIPOは20銘柄で平均の初値騰落率は196%とおおよそ公開価格に比べて3倍の初値が付いた。この時期のIPOは翌月のIPOが極端に少なくなることから、例年初値が高くなる傾向にある。因みに昨年4月のIPOは17銘柄で平均の初値騰落率は218%と今年同様の水準となっている。
IPOの市場別内訳を見ると、前年比で以下のようになっており、大証ヘラクレス市場でのIPO件数が目立っている。大証では今年に入って導入された新しい売買システムの本格稼動が4月から始まり、昨年後半に上場申請の受付が滞っていた案件が一気に承認されたことが大きな要因である。
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2006年 |
2005年 |
ジャスダック |
9件 |
5件 |
大証ヘラクレス |
8件 |
6件 |
東証マザーズ |
1件 |
2件 |
名証セントレックス |
1件 |
1件 |
札証アンビシャス |
1件 |
0件 |
福証Qボード |
0件 |
1件 |
東証2部 |
0件 |
2件 |
合計 |
20件 |
17件 |
調達額でみると、今年の4月は公募と売出しの総額で312億円となっており、1件あたりの調達額は平均で15.6億円(前年同月平均調達額15.2億円)と前年並みとなっている。
IPO市場の動きを見ると、初値が高くなっている銘柄群は4月第1週に集中している。
第1週には6銘柄がIPOしたが、平均の初値騰落率は400%となった。中でも4月4日のジェイテックは初値が4月6日まで持ち越され騰落率は773%となり、その翌日にはストップ高まで買われ公開価格比で11.4倍まで上昇した。
初値騰落率の高安と株式市場全体の動きとの相関関係は薄いのが通例であるが、今年の4月においては、新年度入りと同時に日経平均株価が年初来高値を付けた第1週に初値騰落率も高くなっている。
第1週にIPOした6銘柄の株価の勢いは日経平均株価が第2週から調整に入り、初値を維持している銘柄は一つもなく、4月末には初値の半値にまで下落している銘柄も見られる。
一方、初値は騰落率が38%と高くなかったが、上場後の株価パフォーマンスが高い銘柄としてアルコニックス(3036 JQ)が挙げられる。同社が新規上場した4月24日は急激な円高を受けて、日経平均株価は朝方から売り先行で始まり500円近い下げを演じた日であった。市場が落ち着くに連れ、株価が上昇し今日の終値は6,400円と公開価格4,000円比で1.6倍まで上昇している。
このように4月のIPO銘柄の初値動向を見ていると、株式市場の大きな流れの中で初値が決まっているようだ。新興市場にIPOする銘柄の初値を買いに行くのが個人投資家に限定されている状況からするとこのトレンドはしばらく続くと予測できる。
5月のIPOは4件、1件目は5月2日だが2件目は5月29日まで約1ヶ月間空くことになる。例年、5月のIPOは件数が少ないところに大量の資金が流れ込む為、初値騰落率が高騰する傾向があるが、今年は株式市場の全体の動向に初値が左右される可能性が高いのではないだろうか。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com |