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裁定は働くのか?(1)−関西電力の増配について−
某運用会社日本株トレーダー 鰊(にしん)

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こんばんは。鰊です。GWは如何お過ごしでしょうか?
金融業界の端っこに属する身としては、1、2日は当然の如く出社です。

世間の過半がお休み時は、マーケットが何の前触れもなく大きく乱高下することもありますので気合を入れなければならないのですが、やはりそこは人間と言いますか。

しかも、メルマガでは第一月曜担当なので、こうしてGWの週末に書くことに・・。

さて今週のテーマは裁定は働くのか?です。

まず裁定取引について簡単に説明しますと、「価格変動において、同一の性格を持つ2つの商品の間で、割安な方を買い、割高な方を売ることにより、理論上リスクなしに収益を確定させる取引」(野村證券HPより)ということになります。

「同一の性格の商品なのに割高・割安ということがあるのか」という疑問ももっともですが、例えば、東証とJQに上場しており、かつ両市場でそこそこの出来高のあるベ
ネワン(2412)は、まったく同じ証券でありながら、両市場で値段の異なる時間帯があります。

また、大証とシンガポールの225先物も、大証の値幅は10円刻みに対し、シンガポールは5円刻み(しかも板が薄い)ということもあり、両市場の値段が異なることはしょっちゅうです。

こういった割高・割安のギャップを突くのが裁定取引となるわけです。

個別株でもっとも裁定取引が活発に行われるのは、同じセクター内の銘柄同士の裁定取引でしょうか。もちろんまったく同じ内容の企業というのはありえませんが、それでも同セクターの各銘柄は類似の動きをする場合が多く、割高・割安のギャップが顕著になった時には、狙い目ではあります。

問題点は、個人が取り組んだとしても、割安・割高で生じた差は微々たるものなので、ノーリスクを考慮してもあまり利益が上がらない点です。しかも、必ずしもその差が埋まる保障はありません。PERからは裁定が働くチャンスに見えても、他のファクターで見ると裁定の機会がないケースもあります。

何が原因となって裁定の機会が生じているのか、マーケットはそれを裁定の機会と捉えて、割高・割安を解消しにいくのか、「ノーリスク」だからと飛びついては痛い目に合います。(痛い目に合ってきましたし・・)

しかし、久々に楽しめそうな材料がありました。4月26日の関西電力による増
配発表。年間配当5000円から6000円に引き上げられました。

ここで注目すべきは、業績が安定している電力会社の株価水準は配当利回りによるところが大きい点。すなわち、株価水準は配当額に依存するということです。

四季報で2/28の株価を比較しますと、以下の通りになっております。

東京電力 3140円(配当6000円、利回り1.91%)
中部電力 3080円(6000円、1.95%)
関西電力 2705円(5000円、1.85%)※6000円、2.22%
中国電力 2515円(5000円、1.99%)
北陸電力 2625円(5000円、1.90%)
東北電力 2630円(5500円、2.09%)
四国電力 2620円(5000円、1.91%)
九州電力 2800円(6000円、2.14%)
北海道電力2725円(5000円、1.83%)

配当5000円と6000円では、株価水準が異なるように見えませんか?
東京電力に次ぐ規模を誇る関西電力であれば、配当利回りが中部電力と同じレベルまで下がる(=株価上昇)余地はあるように思えます。

流動性に問題ないことを考慮すれば、大口資金による東電売り(中部電売り)の関電買いといった裁定取引も可能でしょう。しばらく注目です。

但し、関電買いだからといって簡単に上がるわけではなく、関電の下げ幅よりも東電の下げ幅が大きければ、それでも儲かるのが裁定取引。関電のロングオンリーで漁夫の利は難しいかと。

ちなみに利回りが2%を超えている九州電力は2005年、東北は2006年より増配しております。

3月末でも高利回りを維持しているのか、もしくは規模や原発をリスクとしてディスカウントされているのかここも見極めが必要かもしれません。

ちなみに次回は「裁定は働くのか?(2)−やっぱり働かない?−」の予定です。堅い論文からも引用して、裁定が働かなかったケースを取り上げるつもりです。


某運用会社日本株トレーダー 鰊(にしん)
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