サーバ預かり事業が転じてiDCとなる

〜さくらインターネット(東証マザ3778) 笹田社長に聞く〜

皆さんが毎日ご覧になるインターネットサイトは物理的にどこに存在しているのだろうか。ネット証券会社、イーコマース運営会社などは自社内にサーバなどは一切置いていない。ではどこにあるのか? それはデータセンターと呼ばれるところに置かれているのが通常である。

今日は昨年10月12日に東証マザーズに上場され、iDCとよばれるインターネットデータセンター事業を営むさくらインターネットの笹田社長にお話を伺った。

会社設立の経緯
この事業を始めたのは子供の頃からパソコンに触れこの世界に馴染みが深かったこともあります。
まだ世の中にデータセンターという言葉が使われていなかった1997年にエス・アール・エス有限会社を設立し、サーバを預かる事業を東京と大阪で始めました。時期を同じく、田中COOが1998年に大阪に有限会社インフォレストを設立し、レンタルサーバサービスを始めました。1999年にエス・アール・エス有限会社と有限会社インフォレストの共同出資によりさくらインターネット株式会社が設立しました。

当社の事業について
4つの区分に分かれています。
1.ハウジングサービス
当社の運用するデータセンター内のスペースをラック単位でインターネットへの接続を行うための通信回線とともに、顧客に提供するサービス。顧客のメリットとしては、24時間体制でのネットワーク運用体制を整えるための人件費、電源や空調を設置するためのインフラ投資を軽減できます。

2.専用サーバサービス
当社が所有するサーバをラックに設置しインターネットに接続した状態で顧客に貸与するサービス。顧客はサーバの運用や保守の負荷を軽減することができます。

3.レンタルサーバサービス
当社が所有するサーバを1台単位を複数の顧客で共用する形態で貸与するサービス。顧客はサーバの種類やOSなどは選択できないが、個人のお客様には非常に低価格でサーバを利用できるメリットがあります。

4.インターネット接続サービス
データセンターの提供は行わないが、主にISP(インターネット・サービス・プロバイダー)などの「顧客にインターネットのアクセスを提供するような形態」の事業者に大してインターネット接続環境を提供するサービスです。

この四つの区分に分かれた事業で売上の90%強を占めています。

売上の推移
2003年3月期 10.4億円
2004年3月期 14.4億円
2005年3月期 19.3億円
2006年3月期 26.7億円(予想)
区分別売上の伸び率は、ここ2年間で見ると、専用サーバ、ハウジング、インターネット接続サービスの順となっています。 また、売上に占める各サービス区分の内訳としては、前期ベースでみると以下のようになります。

1.ハウジングサービス:31.6%(前期比↑)
2.専用サーバサービス:28.7%(前期比↑)
3.レンタルサーバサービス:15.7%(前期比↓)
4.インターネット接続サービス:15.3%(前期比↓)

当社事業の特徴
当社のデータセンターは都市型データセンターとして東京や大阪に位置しており、機動的に通信回線を構築できる上に非常に安価な通信インフラの調達が可能となります。またインターネット事業者も同様に大都市に存在しておりユーザとの物理的な距離が近いことにより安定した配信能力を保持しています。 当社のバックボーン(対外接続容量)は2006年3月末現在で46Gbpsと同業の中でもトップクラスの高速バックボーンを保有しています。
当社の顧客のトラフィック分析を行うと、アウトバウンド(配信)とインバウンド(受信)が3:1の割合になっています。この数値は顧客サーバからコンテンツの配信がそれだけ多いことを意味しています。つまり多くのコンテンツホルダーが当社の顧客となっており、受信を行うISP業者と回線を直結するピアリングを行うことによって回線のコストの大幅な削減を行うことが可能となっています。 総合すると、顧客に価格競争力の高いサービスの提供を行える事業基盤をもった企業であると言えるでしょう。
今後の展開
顧客別サービスカテゴリーを明確にして新規顧客の獲得を狙います。 個人顧客の開拓については、知識がなくてもウェブ上でコンテンツ製作ができるように作成ツールであるBlogサービスの提供やコンテンツ管理用のインターフェイスであるコントロールパネルを提供していきます。
法人顧客向けには、運用・保守サポート、セキュリティサポートを安価で提供するマネージドサービスやウィルススキャンサービスを提供してまいります
長期的な経営の抱負
最近は毎月100件以上の法人様からのお問い合わせをいただくようになり、今回の上場は社会的な信用を補完する上では非常に役にたったと言えます。
経営の目標としては、5年後に売上200億円の達成を目指します。また株主の皆さんへの還元として、当社は上場前から配当を実施しており、最低限現状の配当はさせていただきたい。また、利益が増えてくれば配当も増額していきたいと考えます。
■西堀編集長の視点
ブロードバンド普及率が毎年上昇し、2005年12月末ではADSL,FTTH,CATVを併せると2,237万件の契約件数となっている。また、携帯電話においてもデータ通信やネットを使える機種が主流となり、個人向けのコンテンツ提供はますます盛んになる傾向が顕著となってきた。ネット事業はおいては勝ち組、負け組が鮮明になってきたが、そのインフラを提供するiDC事業者においてはこれからが勝負の時代となりそうだ。
ネットバブル時代に海外から日本市場に参入したiDCは撤退を余儀なくされ、国内の事業者も長らく冬の時代が続き、この1〜2年でやっと経営が軌道に乗ってきたデータセンター事業者が多い。そのような環境の中にあって、設備投資は稼働率が30〜40%で収支がプラスに転じる規模で行い、1年でその水準まで稼働率を上げる営業体制を引いていることが、ベンチャー企業としてiDCの草分け的存在である当社の経営センスの高さといえよう。但し、大手のキャリア系iDCの資本力に打ち勝つには更なる総合的な顧客価値創造に励む必要がありそうだ。「山椒は小粒でぴりりと辛い」で終わらないように更なる成長を期待したい。
 企業DATA    さくらインターネット株式会社
□証券コード 3778・東証マザーズ株価情報へ
□ホームページ http://www.sakura.ad.jp/
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