GWが明けました。皆様、如何でしたか?
私はGW前にゴタゴタがあり、体調が優れなかったのでひたすら休養。
とにかく本だけは読んだなあ、という思い出しかありません。ちくしょう。
さて、裁定取引の第二回。
前回は、関西電力とその他電力会社にて、配当利回りを利用した裁定が働くのかというテーマを取り上げました。
今回は、そもそも裁定は働くのか?をテーマに、理論的に裁定が働くはずが、実は働かないままというケースを取り上げます。
まずは、以前に本メルマガで取り上げたSCN。SCNの上場時の時価総額がSCNの保有するソネットエムスリーとDeNAの時価総額よりも低かっため、「裁定が働いて2社の持分以上の時価総額になるのでは?」という内容でした。
ところが、ところが。一時は「裁定働いたかな」という水準までSCNが上昇したものの、その後はSCNだけ一方的に下げる展開。少なくとも、裁定を狙えるような展開にはなりませんでした。
また、有名なのはトヨタ本家の豊田自動織機。四季報ベースだと、以下の数値となります。ここでも豊田自動織機の時価総額は豊田自動織機が保有するトヨタ系列の株式時価総額より低くなります。
豊田自動織機の時価総額(2/28) 15,249億
豊田自動織機の保有株の時価(2/28)
・豊田通商の12.8%(980億)※トーメン合併前
・トヨタの5.5%(12375億)
・デンソーの7.8%(2951億円)
この3社のみでも16,306億円。大型株だけに、もはや裁定が働く可能性は低いでしょう。
しかし、このままでは現代ファイナンスが前提としているLOOPや理論株価を否定することになります。
誰か学者さんが真面目に検証してないでしょうか?
ということで「行動ファイナンスの実践」(ダイヤモンド社)を見てみます。
本書のP.50にて、「株式市場においてLOOP(the low of one price 一物一価の法則)は成立するか?」
平たく言えば、「同じ内容の証券は同一価格になると実証できるか?できなければ、裁定取引はノーリスクといえないのではないか?」ということが検討されております。
その中で挙げられている例が、ロイヤル・ダッチとシェル。本書によると、ロイヤル・ダッチは米国とオランダ、シェルは英国で主に取引されており、理論価格はロイヤルダッチ1.5:シェル1となります(※合併しているため)。
ところが、両者の乖離幅はマイナス40%〜プラス20%と大きく振れることが過去のデータから明らかに。ここでは同様に裁定が働かないケースが、複数挙げられております。
実は、理論株価や市場の効率性は昔から「短期はもとより中期的にも実証できないケースも多い」と活発な問題提起が行われております。本書もその一つで、裁定が働かない背景は読んでて興味深いものです。ここでは省略させていただきますが。
もっとも、個人的には裁定取引を否定するわけではなく、裁定が働かないケースもあり、その見極めが重要となると思っております。
いずれ裁定が働いたケースも取り上げてみたいものです。
某運用会社日本株トレーダー 鰊(にしん)
メールはこちら ⇒ nishin-for-t-ipo@hotmail.co.jp
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