5月のIPO市場を総括するにもIPOは3件のみで、その特徴は述べるまでもなく、5月2日の平河ヒューテック、5月30日の健康コーポレーション、5月31日のSBIフューチャーズともに初値天井となり、平河ヒューテックに至っては5月20日には公開価格を割り込んでしまった。
年初からのIPOは5月末までで67件、昨年の55件に比べると12件多くなっている。
市場別に見ると、東証1部と2部市場への上場が前年に比べると9件多く、老舗企業が市場に出てきたと言えよう。
さて、IPO企業の上場後の株価動向であるが、年初からの67銘柄で初値を5月31日の終値で維持しているのは、ぺガサスミシン製造、シライ電子工業、ニッポ電機、アルペン、東洋炭素、ネプロジャパン、アルコニクスの7銘柄のみである。
7銘柄に共通しているのは、ネプロジャパンを除くと初値騰落率が二桁で一様に低いことである。上場日当日は人気薄の銘柄がその後の決算発表などで買われているということだ。
とは言え、初値騰落率が低い銘柄がどんどん買われているかというとそんなことはない。
初値騰落率が低くても上場時の株価に割安感のないものは売られている。
公開価格は同業他社の株価を基準として決められるため、条件が決まった後に株式市場が軟化し、基準となった同業他社の株価に水準訂正が起こると、たとえIPOディスカウントを織り込んだ公開価格であっても、この数ヶ月の新興市場の急落の影響もあって新規上場の企業の株価が割高になってきているケースが見られる。
7銘柄の中でも、製造業であるぺガサスミシン製造、シライ電子工業、ニッポ電機などは今日時点でもPERが13倍程度と相当割安感があり、今後も初値を割り込むリスクは相当低いと言えよう。
ここ数ヶ月のような新興市場の相場環境になると、絶対的な「割安」水準にならないと手を出さないほうがいいだろう。 成長性という要素が株価に反映されなくなってしまっているからだ。
今年の1月中旬までは新興市場の銘柄でも2〜3年後の利益予想をベースにした株価形成がなされていたが、いまの株価はせいぜい今期の業績予想をベースまでである。
株価は企業の将来性を株価に織り込むといわれているが、ちょっと難しい局面にあると考えられる。
とは言え、日経新聞がまとめた新興3市場上場企業の今期の増益率は15.8%増である。東証上場企業の平均値1.5%に比べると相当高い数値である。
ところが、PERを比べると、今期の業績予想ベースで東証上場銘柄の平均は20倍、JASDAQは23倍となっている。
成長性が加味されていないとは言え、JADDAQの23倍はあまりにも低いと考えられる。
6月のIPOは26件、初値が絶対的な割安水準となる銘柄が出てくる可能性は高いと考えられる。もし、読者の皆さんがそのような銘柄を見つけたら即行動に移すべきではないだろうか。但し、投資の基本は中長期であることを忘れてはいけない。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com |