昨日のIPOは6件。
6銘柄の初値以降の値動きを見ていると、二極化の動きが出ているが、1銘柄の例外を除いてはPERの水準で見れば終値は落ち着くところに落ち着いたような気がする。
1銘柄とは言うに及ばないがアドウェイズ(2489 東証マザーズ)である。
今月のIPOは26社と件数は多いが、さほどこれと言って目立つ銘柄が無い中で筆者が注目していたのがアドウェイズである。
WEB2.0なる言葉が今年は大ヒットしている。同社のビジネスはネットビジネスの中でもロングテールと呼ばれる個人のHPやブログなどを媒体に成功報酬型の広告ビジネスを展開している。
まさに、時代にマッチした成長企業であるのに加えて、アドウェイズの岡村社長は最年少上場企業社長としての話題性もあった。
ところが、上場当日の9時過ぎには初値が付いてしまった。
立花証券が誤発注をしてしまい、2,600株を1,670円で売注文を入れた結果、初値が147万円となってしまったのである。
当日はストップ高の167万円の買気配で終えたが、類似会社のファンコミュニケーションズに比べて初値はPER基準だと相当割安な水準となった。
IPOディスカウントを考慮すると、あるべき初値の水準としては本日のストップ高の200万円前後といった水準ではないだろうか。とは言え、2,600株の売り注文が出なければ、IPO銘柄の上場日の特徴で初値は本日まで持ち越された可能性が高い。
今日のコラムはアドウェイズの初値議論ではなく、本題は、誤発注そのものである。
読者の皆さんもお気づきかもしれないが、今回の誤発注について東証のシステムについてはほとんど触れられていない。
3月22日に出された東証の声明文を読んでみると、上場株数の30%を超える株数の注文は受け付けない、また上場株数の5〜30%相当株数の注文については誤発注であるか否かを取引参加者(証券会社)に確認し、誤発注であることが確認できた場合は付き合せを一時留保し、取引参加者に注文の取消しを要請する、ことになっている。
しかしながら、今回の誤発注は確認の時間もなく初値は形成され、1,482株が売れてしまったようである。
IPOの場合は、正常な取引が行われたとしても上場当日は公開株数(公募・売り出し株数の合計)の数倍の出来高になることが多い。また、注文は寄り付きに集中するため、誤りが起こった場合の損害額は多大にならざるをえない。
そのような事は容易に推測されるはずであるが、東証のシステム対応は発注株数を制御するところで留まっていたのだろうか? 株数もさることながら、株価も二桁違いの値段で発注されたのであれば、受け付けないようなシステムの仕組みがあるべきだ。
東証のシステム対応はどこまで進んでいたのか疑問が残る出来事になってしまった。
立花証券は、昨年12月のジェイコムの誤発注以降も社内で防止策は取っていなかったことを認めている。立花証券は自業自得の結果であるが、アドウェイズの経営陣と公募・売り出し株を運良く射止めた投資家にとっては初値形成を大きく歪められて迷惑な話である。
東証はライブドア事件で注文処理にかかるシステムの増強は対応したかもしれないが、誤発注にかかるシステムの見直しはなおざりになっていた可能性が高い。
その代償は立花証券が1,482株の買戻しにかかる費用を負担することで終わらせてはいけないはずである。
東証は昨年のジェイコムの件以降どのような対策を講じてきたのかを説明する義務があるのではないだろうか。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com |