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ファンドに対するインサイダー規制は強まるのか?
  株式会社ティー・アイ・ダヴリュ ジェネラルパートナー 藤根靖晃
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村上世彰氏は、逮捕直前の記者会見で「聞いちゃったことがインサイダーと言われれば仕方ない」という趣旨の発言を行っていたが、この発言に戦慄を覚えたファンドマネージャーの方も多かったのではないかと思う。もちろん、村上氏の容疑は単に“聞いちゃった”だけではないと推察されるが・・・。しかし、“聞いちゃった”ことに反応して売買行動を行うかどうかは個々のファンドマネージャーの良心の問題であるが、“聞いちゃった”という経験はファンドマネージャーなら誰もが一度ならず持っているものと思われる。

個人投資家と異なり、機関投資家は発行会社のマネジメントと一対一(one on one)のミーティングを数多くこなしている。密室の中で行われているミーティングであるだけに、双方が胸に仕舞い込んでいる限り、幹部が逮捕されるといったライブドアのような極めて特殊なケースで無い限り、“聞いちゃった”ことが外部に露呈することは無いだろう。

8年前の古い事例で恐縮だが、小生が証券会社時代に海外の大手機関投資家と(小学生でも知っている)或る有名電機メーカーに取材訪問に行った際に本当に呆れてしまったことがある。ミーティングに出てきた財務担当常務が、まだ公表前の大幅下方修正の予定について事細かく話し始めたのである。ファンドマネージャー氏も呆れたのか、それとも小生が同席していたのではばかられたのかは分からないが、下方修正の話題にはその後敢えて触れなかった。同ファンドマネージャーが持株を売却したかどうかも定かでない。

もちろん、こうした例は最近では殆どありえないケースだろう(と信じている)。発行会社側がインサイダーに当る内容を機関投資家にわざわざ話すインセンティブは無い。しかし、村上ファンドではないが、特定のファンドが一定以上の持株比率を持つ場合には歪んだ株主力学が働く可能性も考えられるであろう。

こうした疑念を避けるために、既に少数企業への集中投資を行っているファンドの中では外部リサーチの利用などによって透明性を高めることを検討しはじめたようだ。

好むと好まざるにかかわらず、小型株への投資は僅かな投資金額によって、比較的大きなシェアを占めてしまうことに陥りやすい。インサイダー規制が強化されれば、機関投資家の“あらぬ疑い”を回避する行動によって時価総額の小さな企業からの資金の逃避が起こる可能性も考えられる。TOPIXでは既に底値圏に達しつつあると思われるが、新興市場にさらなる震撼が起これば、個人投資家の株式離れが加速する。株式投信の販売にもブレーキがかかる可能性も考えられる。まだまだ市場に不安要素は尽きない。外部に情報発信を行う中立なリサーチ機関を拡充してゆくことが負のスパイラルに陥らないための解決方法と思うのだが、どうだろうか?

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