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新規公開株式情報の東京IPO
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企業グループファンドは、証券会社の収益獲得手段なのか?
それとも投資家層拡大に向けた進化型なのか?
  株式会社ティー・アイ・ダヴリュ ジェネラルパートナー 藤根靖晃
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2003年11月に「トヨタグループ株式ファンド」が、トヨタアセットマネジメントにより設定され、457億円(2005年9月現在)という運用額と高いパフォーマンスを実現している。

設定当初は、運用会社がグループ企業であるためにグループ会社の株価サポートや株式持合の変形に当たるのではないかという非難も合ったように思われたが、好パフォーマンスという結果によって、こうした批判は殆ど見られなくなったようだ。投資商品である以上、運用成績(=結果)が正義ということなのであろうか。

さて、直近では、みずほファイナンシャルグループの新光証券(販売)、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(運用)は、この7月末を設定日として「新日鉄グループ株式オープン」の募集を行っている。

「新日鉄グループ株式オープン」は、新日鉄の株式を約50%、連結子会社・持分法適用会社・新日鉄が筆頭株主の会社の株式を約50%とし、時価総額に応じて組み入れ比率を決定し、四半期毎に調整を行うという運用スタイルをとる。

組み入れ対象となるグループ企業としては、日鉄鉱業、日本電工、日新製鋼、大阪製鉄、合同製鉄、中山製鋼所、山陽特殊製鋼、大同特殊鋼、太平工業、黒崎播磨、日鉄商事、新日鉄ソリューションズ、鈴木金属工業、日鉄ドラム、三晃金属工業、日亜鋼業、東京製綱、トピー工業、ネツレン、テトラ、佐世保重工業などが挙げられ、一部を除けば鉄鋼・鋼材関係であることは一目瞭然である。

トヨタの事例とも共通するが、半分が新日鉄の株式であり、残りの半分も鉄鋼・鋼材関連であるだけに新日鉄の株価パフォーマンスに近似することは明らかであろう。ポートフォリオ理論に従えば、リスクを分散しつつパフォーマンスの最大化を図るというファンド本来の考え方からも乖離している。平たく言えば「トヨタ」同様に新日鉄の原株を購入するのと何が違うのか?という単純な疑問に突き当たる。

こうした疑問に対して、まずはネガティブな見解を述べておこう。新日鉄のメインバンクはみずほコーポレート銀行である。メインバンクであると同時に2.6%の大株主となっている。メインバンクによるファンドを介した間接的な株式持合いではないか、という穿った見方も取れなくないだろうか。

また、同ファンドの申し込み手数料は、1千万円未満3.15%(税込み)、1千万円〜1億円未満2.10%(税込み)であり、同社の対面の株式委託手数料が1千万円で約0.8%(税込み)であることと比較すれば遥かに高くなっている。さらに年率0.882%(税込み)の信託報酬が課せられることを鑑みれば、販売・運用会社の収益獲得手段にしか過ぎないという見方も可能となろう。

一方で好意的な見解をあげるとするならば次の通りである。現在、預貯金からの資金シフトが投資信託に向かっているが、株式投資経験の無い個人投資家にとって株式に投資するハードルは高い。

ファンドという形式を取ることによって心理的な障壁を低く抑える。株式投資初心者にとって面倒な銘柄選択を不要とする一方で、「新日鉄グループ」に限定することによって同グループへのファンド投資家の関心を高め、また同時に株式投資全般への興味を喚起する。ファンドにすることにより短期売買からの回避を進め、中長期投資の効用を投資家に実現させる。

ただし、こうしたポジティブな効果が実現できるのは、冒頭でも言及したが、最終的なパフォーマンスである。現在の新日鉄の株価はPER10倍そこそこにあり指標面では割安感が強い。規模では世界第一位のミタルに3倍超の差をつけられているものの、技術面では優位にある。世界的な再編劇が続く中で同社の存在を無視できないことは明らかであり、投資対象としての魅力は十分である。こうした観点からは投資推奨の進化型と言えなくも無い。

「投資家層拡大に向けた斬新な試み」OR「証券会社が投資家から掠め取る手段」。どちらに転ぶかはパフォーマンスが決定するだけに、新日鉄の株価はこれまで以上に興味深いものとなる。願わくば、金融機関全体の信頼を害わないためにも高パフォーマンスを実現して貰いたい。

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