少子高齢化時代の成長企業となるか
高齢化社会と呼ばれるようになって久しいが、年間の死亡人口も増加の一途をたどっており、2004年の102万人から、2040年には170万人近くに達するという統計データが出ている。この人口動態の変化を捉えた事業が葬祭事業である。経済産業省から出ている一葬儀あたりの費用に人口統計資料の推定死亡者数を掛け合わせた金額は2005年に1兆7000億ほどもあり、2040年頃には3兆円に達する見込みである。このように拡大する葬祭事業マーケットに新しいコンセプトで参入した企業が6月2日に名証セントレックスに上場した。 今回は「日本で一番『ありがとう』と言われる葬儀社」を目指す株式会社ティアの冨安社長に話を伺った。〜ティア(名証セントレックス2485) 冨安社長に聞く〜 |
事業内容 名古屋市を中心とした中部地区で葬儀場の運営を行っている。現在、直営の葬儀場が19箇所、フランチャイズで2箇所。売上は前期実績で約36億円、今期は43億円を見込んでいる。昨年は名古屋地区で2400件ほどの葬儀を請け負っている。
会社設立の経緯
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創業の師、横山氏との出会い 独立に向けて奔走していた1996年にプロトコーポレーションの横山氏と出会う。横山氏はちょうどそのころ、経営不振に陥っていた互助会を買い取り、その後の運営について検討していた。冠婚葬祭業のメインもブライダルから葬祭業にシフトしている時期だった。冨安氏の葬祭業に対する熱い思いは横山氏に伝わり、設立当初資金の出資を受けることとなる。そして1997年にティアが設立された。 ティアの特徴 会社設立に向けてコンビニの経営を参考にした多店舗構想を思いつき、「近い」「安い」「親切」の3つのキーワードを元にコンセプトが固まった。 「近い」というのは、遺族の家から近く、便利なところにある会館を作ること。「安い」は葬儀の価格であるが、「安かろう、悪かろう」ではなくて、サービスの内容と葬儀価格をオープンにすること。それまでは、葬儀を行う顧客にあわせて値段が設定されるケースが普通であったが、ティアはあらかじめ、葬儀の内容別に価格を提示した。「親切」は遺族の家族や参列者に対する従業員の対応をより充実させること、であった。 次なる戦略はドミナント戦略をとったこと。冨安氏が勤めていた大手互助会は、大都市に数箇所の大型の会館を作る戦略を取ったのだが、コストが高い上に、顧客から見て、わざわざ離れた会館まで足を運ぶことになり、顧客のニーズに合わないと冨安氏は考えていた。そこで、住民の住む地区にコンビニのように集中的に葬儀会館を建てる戦略をとった。 更なる戦略として会員制を導入した。最近では、高額な葬儀費用を積み立てて支払う仕組みの業者が多いようだが、当社では、一度、1万円の入会料を支払えば、割引価格で葬儀を行える。そして会員数は約9万世帯まで伸びてきているそうだ。 |
同業他社との差別化 当社は死を扱う事業を行っており、社員が死を軽視したり、死に慣れるようなことがあってはいけない。だから冨安社長は社員に対して「仕事には慣れてもいいが、決して遺族の悲しみには慣れてはいけない!」と常々言い聞かせている。 まさに遺族の気持ちに飛び込んでいき、心の琴線に触れる感動のサービスを提供し続ける社員がいることが他社との明確な差別化ではないだろうか。 |
今後の展望
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■西堀編集長の視点 |
葬儀というと遺族は限られた時間の中で病院や知人に紹介されるがまま葬儀社を決めて出費に関してもおおまかな金額だけを押えるだけであとは葬儀社任せになっていることが多いのではないだろうか。少子高齢化が進む中において、お子さんがいない方や、子供に金銭的負担を負わせたくない方々は、自分の葬儀は自らが決めておきたいという人も今後は増えてくるものと思われる。そうなってくると冨安社長の言うように、不透明な価格の葬儀や社員の対応の悪い葬儀社は採用されなくなるに違いない。 「葬儀」を「ビジネス」にするという感覚は日本人には馴染まないかもしれないが、人生の区切りのセレモニーであることに間違いなく、高齢化した日本の社会においては今後益々注目が集まるだろう。 その中においてお客様に人間力を売り込む『ティアイズム』は拝金主義が蔓延してきた日本の社会において見直される古くて新しい価値観である。自らの人生の最後くらいはお金に塗れない人達に見守られて天国に行きたいと考える人たちの共感を得られることがティアの全国展開を後押しするのではないだろうか。 |
企業DATA
株式会社ティア |
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□証券コード | 2485・名証セントレックス | ||
□ホームページ | http://www.tear.co.jp/ | ||
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