6月は上場企業数が多い月だ。この月公開銘柄の1ヵ月後株価が、初値よりも高いかどうかは投資家の心理を映している。昨年と比較して、今年上場した銘柄の1倍以上比率は低下している。IPO投資家は、1ヵ月の動きに我慢できなくなってきている。だが、その差は僅かだ。
市場から聞こえてくるのは会計不信の声。開示内容や処理の正当性を問うたのが端緒だが、これを法権力が後押しした。一旦崩れた市場からは、同じ会計問題を抱える企業が登場して、やっぱり。企業の価値を買う投資家からすれば、決算に信頼性がなければその表象証券など買えたものではない。
IPO投資家は短期売買型が多いので、企業会計に対する信頼性問題は重要度が低い。短期売買にとって重要なのは流動性の高さだからだ。ただ、IPO市場の流動性は、市場全体の活気にも依存する。それは公開企業数の数にも左右されるし、大型株市場の動向にも影響される。とすれば、巡り巡って、ここにも会計不信の影響が少しはあることになる。
見える影響は、大手企業による監査法人の変更という形で表面化してきている。一般に監査人が交代するのは大変なことだ。大変な事だけに、監査業界にとっては大きなビジネスチャンスにもなる。大手企業の監査を行なうには、一定数の会計士を張り付けるので、監査法人は人ぐり困難に直面しているという。
この玉突きは新規上場を目指す企業の選別にも繋がっている。上場まで進める確度が低い企業から、監査法人が逃げ腰になっている、というのだ。透明度でのリスクを抱えている企業の監査を行なえば、後々に禍根を残すという事なのだろう。上場申請に必要な2期間の監査証明確保からが上場を目指す企業にとっての障壁となってきた。ならば、来年以降に上場してくる企業は、これまでよりも厳しい審査を経た会社が登場してくる可能性が高い。これは、長期保有への安心感を高める。という前提に立てば、流動性だけで動くIPOに変化が生じてくる。
他方で、ネット取引の拡大と決済期間短縮は現実の動きだ。これはマネーゲーム化を通じて流動性を高める。安心感よりも過去を忘れる「ほとぼり」の方が目先を動かす。そんな日にち薬効果は間もなく現れる。
日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり) |