7月のIPOを振り返ると件数は8件と6月の26件から大幅減となった。市場別に見ると、大証ヘラクレス3件、東証マザーズ2件、大証2部、札証、東証2部がそれぞれ1件ずつで、新興市場のJASDAQへのIPOは1件もなかった。
初値騰落率について見ると、今年IPOした101銘柄の平均値100.67%と比較してみると7月の8銘柄の平均値は63%と低調な水準となった。また、個別の初値騰落率を見ると、7月5日に上場したサイバーステップ(東証マザーズ)は216%となったが、7月13日の東京建物不動産販売(東2)と7月27日のカワサキ(大2)は初値が公募価格割れとなり、初値は銘柄によってまちまちの展開となった。
上場日以降の株価の動きについて見ると、初値を維持している銘柄は初値が公募価格割れとなった東京建物不動産販売のみで、その他の7銘柄はいずれも公募価格割れとなっており、初値騰落率が一番高かったサイバーステップは初値の2分の1の水準まで下げている。
このような初値以降の株価の動きは今年のIPO銘柄すべてについて共通しており、IPO101銘柄のうち、初値を維持しているのが11銘柄のみとなっており9割近い銘柄は初値天井に近い株価形成となっている。一歩踏み込んで見てみると、7月31日の終値で公開価格を維持しているのが49銘柄、つまり52銘柄が公開価格割れとなっている。
7月末時点で公開価格割れとなっている銘柄を見ると、2月17日のアプライドから3月19日のエスケイ冷凍食品までの18銘柄すべてが公開価格割れである。ライブドアショックから1ヶ月を過ぎて新興市場が少し立ち直ってきたときのIPO銘柄であるが、この時期は初値も冴えない動きであった。昨年末から新興市場相場の中で市場にも強気が蔓延しており少し割高な公開価格の設定が行われていた可能性もなくはない。
4月に入ると初値は高くなるが、その勢いがすぐになくなり失速してしまう銘柄が多く見受けられた。その背景としては、3月決算の発表において新興株式市場に上場している企業の業績の下方修正や決算短信の修正などが続き、会社の発表する業績予想数値に対する不信感が台頭してきた。そのことが新興市場株の下げに繋がり東証マザーズや大証ヘラクレスの株価指数を年初から半分以下に押し下げIPO銘柄にも大きな影響を与えたと考えられる。
このような環境の中において、「もう新興市場株投資は止めた!」とおっしゃる個人投資家の方も多いと思われるが、いまこそが絶好のチャンスと考えるべき時期であろう。
なぜならば、ここでIPO株の公開価格がどのように決まるか?ということを考えてみると理解が深まる。
証券界では類似会社比準方式と呼ばれているが、事業内容が似通っていて事業規模が近い上場企業の株価バリュエーションに合せて適性株価を算出し、そこからIPOディスカウントと呼ばれる割引率を掛け算して公開価格が決まるのである。
新興市場に上場する銘柄の比較対象企業は新興市場上場企業であることからこの環境では類似会社のPERも相当低くなっている、その上、上場後の株価がすぐに公開価格割れになるような環境ではIPOディスカウントが大きくなるのである。(詳しくは私の著書:「No.1情報サイト 東京IPO編集長が教える!IPO株の本当の儲け方」)
つまり市場全体に割安感があることに加えて、類似会社よりも割安に設定された公開価格を下回っている現在のIPO株の株価水準は異常な状況にあると言っても過言ではない。
銘柄選びのチェックポイントは、
- 増収・増益
- 時価総額が50億円未満
- ベンチャーキャピタルなどの売り圧力がない
- PER15倍未満
この4要素を満たす銘柄であれば、そうそう下値不安はないはずである。
トレーディングではなくインベストメント(投資)をされる投資家にとっては、またとない機会が訪れたと言ってもいいだろう。
個別の銘柄はご自身でお選びいただきたい。
2006年IPO銘柄の一覧は
→ http://www.tokyoipo.com/top/iposche/index.php?j_e=J
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com |