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編集長のジャストフィーリング 〜第1四半期終了〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

土曜日の日経新聞一面に3月決算企業の4−6月期の業績集計が載っていた。

集計は上場企業932社の連結ベースの売上高と経常利益で、なんと経常利益は前年同期日比で15%の増益である。

私がいまさら解説する必要もないかもしれないが、業種別の前期比増益率上位を見ると、
1位: 不動産 176%
2位: 電気機器 69%
3位: 商社 45%

一方、前期比でマイナスになっている業種は、
海運 −36%
紙・パルプ −33%
鉄鋼 −14%

などである。

さて増益の背景であるが、なんと言ってもまず最初に「円安効果」が挙げられるだろう。

3月決算企業が決算発表と今期業績予想を発表した4月下旬〜5月上旬は、日銀がゼロ金利解除に動き出し、円ドル為替レートが年初から続いた115円〜120円の水準が急に円高方向に動きだした時期であった。 その結果、大手輸出関連企業は円ドル為替レートをより慎重な円高水準で業績を見積もることになった。

しかしながら円ドル為替レートは予想に反して5月中旬に110円を越す円高となって天井をつけ、その後は再び115円〜118円の水準に戻ってしまった。そして輸出関連企業の売上は期初に予想した水準から少なくとも5%程度は各社ともに増えることになったに違いない。

また見落としてはいけないのは、資源・エネルギー高の影響を大きく受けている業種もあるということだ。原油高が業績悪化につながる業種もあれば、その逆にフォローウィンドになっている業種もある。業績悪化を招いている業種は顧客に価格転嫁できていないということだから、今後もそのトレンドはそうそう変わらないと見るべきだろう。

株式市場にとって重要なことは、第1四半期のトレンドが第2四半期以降も持続するかどうかだ。

1年前を振り返ると企業業績は今年と同様に期初は非常に保守的に見積もられていた。ところが第1四半期の数字が出揃った頃から外国人投資家の日本株買い出動が始まった。たまたま偶然の一致で、郵政民営化法案が参議院で否決されたのをきっかけに小泉首相が衆議院の解散を行ったことで日本の改革路線の維持が確認されたことを外国人投資家が好感したことが買いにつながったなどという人が多いが、実際は企業業績の上ブレ期待感が第1四半期の数字を見て高まってきたというのが本質論である。

とするならば、今年も同じような展開が期待できるはずである。

でも、状況は昨年と少し違う。 それは金利の水準である。 株式投資とは金利と株式益利回りの裁定取引であるとするならば、金利上昇以上に株式益利回りが上昇しなければ株式投資の妙味はないはずである。 

1年前の金利水準は10年国債の利回りが1.4%、現状の水準は2%弱である。一方の株式益利回りは昨年がPER16倍で6.2%、現状がPER19倍で5.2%である。その差は昨年の4.8%から3.2%への縮小しており昨年に比べると投資妙味はない。

金利が今後上昇することを考えれば、PERが下がり益利回りが上昇すること意外に株式投資を行うインセンティブはなくなる。

もし仮に今期の経常利益が第1四半期と同じように15%成長するならば、上場株式の平均PERは10%程度下がることになる。 19倍が17倍になるということだ。 よって益利回りは5.2%→5.9%と変化する。 金利上昇が年末までないとするならば、益利回りと長期金利のスプレッドが3.2%→3.9%へと大きくなり株式投資の妙味が増すことになる。

果たして第1四半期の増益率をそのまま年換算して株価織り込んでいく動きとなるかどうかがお盆明けの株式市場の焦点となろう。

もし8月末まで現状の株価水準が動かないとするならば、それは市場が今回の15%増益は一過性のものだと認識しているとみるべきだろう。 

とすると次に株価が動き出すきっかけとなるのは中間決算の数値発表まで待たねばならぬことになる。 

9月の過去10年間の月間騰落率は3勝7敗で分が悪い。

為替が円高にでも振れようものなら大型株はそろそろ手仕舞いを考えねばならぬ時期に突入するかもしれない。

 

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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