〜夢の街創造委員会(大証H・2484)中村社長に聞く〜

仕事をしていてお腹はすいたが外に食事にいく時間はない、でもコンビニ弁当やおにぎりばかりじゃ飽きが来た。週末の家庭で今日は家族揃って外食でも・・・と考えているとずっと雨で外に出る気がしない。そんなときに少ししっかりした食事をしたいが出前を頼むのも面倒だと思った経験は何度もあるのではないだろうか。

そんなときパソコンの画面を変えてクリック何回かで数十分後に出来たての料理が運ばれてくるとしたらどうだろうか? 蕎麦屋の出前のようにどんどん注文を受けていつ届けられるかわからないから出前など頼まないほうがましだ!という方も待ち時間がわかればフラストレーションも大きくならないで待つことができるはずである。

そんな飲食物の出前をインターネットを使って仕組みを構築したのが、6月5日に大証ヘラクレスに上場した夢の街創造委員会株式会社である。今回は同社の中村利江社長にお話を伺いした。


事業内容
当社は、宅配サービスに特化したバーチャルショッピングモール「出前館(http://demae-can.com/)」を運営を主たる事業とし、「出前館」には主に「ピザ」「すし」「弁当」等の飲食店が出店している。2006年6月末現在で1,200ブランド、6000店舗と提携している。

中村社長の経営への参画の経緯
当社は1999年9月に創業者花蜜氏が大阪市住之江区で設立し、翌年10月にデリバリー総合サイト「出前館」がオープンした。

中村社長はリクルートの出身で、学生時代には学生企業家としてモーニングコール事業を立ち上げるなどユニークな経歴の持ち主。当社とのかかわりは、在籍していた持ち帰り弁当チェーン「ほっかほっか亭」を運営するハークスレイ社が出前館に出店したことからはじまる。2001年4月にハークスレイを退社しマーケティング支援会社を設立し、当社の支援を始め、同年7月にはマーケティング担当取締役として経営に参画した。当時は資金繰りに苦労をしており事業継続ができるかどうかの瀬戸際であった。そんな時に資金調達のために事業計画を策定して、改めて事業の将来性を確信し、引き継ぐかどうか迷ったそうだが、ゼロから作るよりも今ある資産を生かそうと決断し、2002年に創業者の花蜜氏から経営を引き継ぐ形で当社代表取締役に就任した。

当社の事業の特徴

ありそうでなかなかなかったともいえる出前サイトだが、思った以上に技術を必要とするビジネスのようだ。出前は、注文を受けてからすぐ届けるのが基本。そのため、オーダー漏れや遅延は許されない。そのための仕組みを当社は独自に開発した。

注文を受けるまでの一般的な流れはこうだ。

お客様はパソコンや携帯電話からオーダーを行い、サイトで受けたオーダーはFAXで店に配信される。その後に「出前館」から注文確認の自動電話がお店に入り、お店側では了承のコマンドを入力し、それで受注は完了する。お店のほうでは「0♯」でOK、「1♯」で再送希望、「待ち時間♯」でサイトに表示される待ち時間の変更を行うことができる。

飲食店にはインターネット環境やパソコンなどがないところが多いが、当社の仕組みは新たな追加投資や知識を必要とせずに、簡単なオペレーションで新たな顧客層を開拓できる仕組みとなっている。大手顧客に対しては、POSにダイレクトに注文が入るシステムも構築しており小さなお店から全国チェーンの飲食店まで幅広い層にサービス提供ができる仕組みを構築している。

利用する一般顧客にとっても生活に浸透しているパソコンや携帯電話で気軽に近所のデリバリー店舗を探すことができ、待ち時間のリアルタイム表示などかなり便利にできている。筆者も早速使ってみたが、リストの中から食べたいものを探すのはなかなか楽しいものである。

当社のビジネスモデルであるが、加盟店から利用者の注文に応じた手数料(売上の5%程度)、月々の掲載料(3,000円)、加盟料(数万円)で構成されている。加盟店が増えれば増えるほど、初期売上が増えるが、それにもまして利用件数が増えることが当社の成長には欠かせないファクターである。利用者を増やす仕組みとして、ヤフーと「Yahoo!出前注文サービス」、インデックスと「モバイル出前館」を共同事業として立ち上げており、顧客の流入口を押えていると言えよう。

加盟店であるが、ドミノ・ピザのヒガインダストリー社、カレーハウスCoCo壱番屋、ケンタッキーフライドチキンなどの大手をはじめ、全国の飲食宅配業。月々の掲載料と売上に応じた手数料が支払われる仕組みで、現在1,200ブランド、6000店舗と提携している。また当サイトの登録会員数もヤフーとの提携などで、順調に伸ばしており、2006年6月時点で62万人となっている。

また最近はフード以外の取扱いも充実しており、スーパーやお酒、クリーニングなどといった生活に密着した商品やサービスのデリバリーから、最近では、スーツのオーダーメイドといったものも登場している。また、当事業年度より、姉妹サイト「駆けつけ館」も立ち上げ、困ったときに役立つサービスの提供もスタートし、生活に関わる広い範囲で役立つサイトとなっている。

今後の展望について
経営の目標としては、5年後に全国にある飲食店25,000店舗と契約し、売上100億円を目指したい。

株主還元については、今期中に累積した損失も終了し配当原資ができる予定であり、来期以降には配当も考えてきたい。また行く行くは株主優待の導入も検討していきたいそうだ。
業績の推移
  売上 経常利益
2003年8月期 101百万 △36百万
2004年8月期 144百万 △77百万
2005年8月期 360百万 △29百万
2006年8月期 647百万(予想) 147百万(予想)

■西堀編集長の視点

2005年年初のコラムで連載した「時代の流れを読む」シリーズの中で日本人の時間の使い方が変わってきていることについて書かせていただいた。

当時のコラムはこちら → http://www.tokyoipo.com/column/nishi2005.htm

日本は少子高齢化の流れの中で労働力が不足しており、女性の社会進出よって家庭の主婦といえども買い物に行く時間すらなくなってきており、最近はコンビニエンスストアーのみでなく大手のスーパーマーケットまでもが24時間営業で対応し始めている。そのような家族全員が忙しい毎日の中で家庭の食卓を飾り始めたのが中食と呼ばれる庭外で調理された食品を家庭内でとる食事形態である。そして今回紹介した宅配サービスによる調理された料理の出前は、忙しい家庭の食卓ばかりではなく、週末の家族団欒の食卓、高齢者の食卓、週末の家庭パーティなど多岐にわたる場面で利用が可能となってきている。

また飲食の宅配サービス市場は、2004年度の1兆2000億円から2009年度には1兆8000億円にまで成長することがみ見込まれている。この数字の成長は日本人の生活習慣の変化による新しい食のあり方を如実に映し出しており、確実に着実に伸びていくものと推察できる。おまけに、家庭における高速ブロードバンドによるインターネット環境の普及にも後押しされ、当社の仕組みを利用した宅配サービスのあり方は市場シェアを伸ばす方向にあるだろう。

その成長をイメージすべき成功事業としては「楽天」や「一休」が筆者の頭には浮んでくる。時代変化を味方につけた当社の事業はインターネットを使った事業としては正に生活密着型ビジネスで利用者にとっては一度使うとやめられないサービスとなっていくことだろう。

読者の皆様もこれを機会に是非一度ご利用されてはいかがだろうか。

「出前館」サイト → http://demae-can.com/
 企業DATA    夢の街創造委員会株式会社
□証券コード 2484・大証ヘラクレス株価情報へ
□ホームページ http://yumenomachi.co.jp/
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