┏ ――――――――――――――――――――――――――――― ┓
新規公開株式情報の東京IPO
http://www.tokyoipo.com/
┗ ――――――――――――――――――――――――――――― ┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集長のジャストフィーリング 〜ヒーローが創り出す幻想〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

久しぶりにディズニーランドの近くにある舞浜イクスピアリの劇場で映画を観た。

世界中で愛されているヒーロー、スーパーマンが活躍する人気アクションのシリーズ最新作「スーパーマン・リターンズ」だ。

日頃はお姫様や王子様役などを演じているディズニーランドで働く米国人が多く劇場にいるようで、予告編のあいまにディズニーシーのCMが入ると、おおはしゃぎ、続いて、本番の映画が始まるや否や大歓声が起こった。前の席に座っていた米国人らしき男性はスーパーマンが空を飛ぶときのポーズをとって大声を出す始末であった。きっと米国人にとってスーパーマンは特別な存在であるのだろう。

映画が始まるとスーパーマンの派手なアクションに酔いしれて上映時間の154分はあっという間に過ぎ去ってしまった。また、アメリカ人の大好きな「正義は必ず勝つ」というヒーローイズムもあって心地よい気持ちでエンディングを迎えられた。

たった一人の架空のヒーローがその場にいる人々を元気にする。でも、そのヒーローは現実には居ないことがわかっているから時間が過ぎてもヒーローでいられるのである。

では株式市場のヒーローの場合はどうだろうか。

後から振り返ればネットバブルと呼ばれる株式市場の熱狂を創出し、今世紀に入るときに株式市場を大変元気にした人物がいた。皆さんよくご存知のソフトバンクの孫正義社長である。

20世紀の後半は不良債権問題が顕在化し、銀行・証券だけではなく全産業において破綻が続き日本の企業は将来を憂いて人材、設備への投資を行わなくなってしまっていた。そのあおりを受けて、若者は就職できないばかりか、国民全員が日本の将来について失望感すら持ち始めていた。

そんな最中に、孫社長はナスダック・ジャパンを創設し、ジャパニーズドリームを実現するためのインフラを整備して、ネットビジネス事業者だけではなく、これから起業をしようとする日本の若者に夢と希望を与えたのであった。

そのお陰で株式市場は一時的に沸き立ったものの2000年の春には熱狂も冷めてしまい、ネットビジネスの分野で起業した若者の多くは株式市場の後退と共に資金調達が厳しくなり事業継続を断念せざるを得ない人も続出した。

そしてインフラとして整備されたナスダック・ジャパンも2002年秋には撤退となり、証券市場のヒーローとなっていた孫社長はいつの間にかメディアから姿を消し、ソフトバンクの株価も80分の1近くまで減価してしまったのであった。

夢が夢で終わった企業家もいただろうし、株式投資で大痛手を被った個人投資家も少なからずいたはずである。

そして2003年4月に日経平均株価が底打ちすると、証券市場には皆さんよくご存知の次なるヒーローが生まれた。誰しもが知るライブドアの堀江社長と村上ファンドの村上氏である。

ライブドアのプロ野球への参入やニッポン放送買収などで堀江社長の一挙手一投足をメディアが取り上げ、露出が高まるのと呼応する形でライブドア株は上昇を演じた。また世界から集めた資金でファンドを組成した村上氏もメディアに露出し村上銘柄なるものが個人投資家の間でももてはやされるようになった。

しかしながら個人投資家が二人の行動に酔いしれた期間はそう長続きはしなかった。今年の1月に堀江社長、5月には村上氏が逮捕され証券市場から潮が引くように個人マネーが引いてしまった。

株価の源泉は企業利益であることくらいは周知の事実であると思われるが、個人投資家というものはいつも冷静に投資判断をできるものではない。 

プロの投資家であれば、ヒーローが創り出した加熱した株価は幻想であることくらいはすぐに理解できるが、素人の個人投資家は幻想と現実の区別が付かないものである。

株式市場のヒーローは個人投資家に気分良くお金を株式に投じさせてくれるが、その結末はいつも悲惨な結果が待ち受けている。

ときにはスーパーマンの上演時間154分間が短く感じるくらいに株式投資にものめり込みたい気分になりたいときもあるはずだが、そんな気分になるときこそ市場には赤信号が点滅していると考えるべきである。

証券市場とは、銘柄と言うヒーローはあっても、人物がヒーローになる場所ではないことを肝に銘じておくべきである。

証券市場にスーパーマンはいないということであろう。ヒーローはスクリーンの中だけにいるべきである。

 

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

(c) 1999-2005 Tokyo IPO. All rights Reserved.