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編集長のジャストフィーリング 〜要注意のREIT投資〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

国土交通省が2006年の基準地価(7月1日時点)を発表した。

日本全国の平均値は▲2.4%と前年の▲4.2%から下落率が縮小したとは言え、まだまだデフレが進んでいるのか?と思わせるような結果となっている。

一方、3大都市圏では0.9%上昇し、前年の▲2.9%から反転してきた。

調査統計データを見ると日本全体の人口動態とは裏腹に政令指定都市の人口は若干ながらも増加基調にある。

人は都市部に集中し、地方都市はどんどん人口が減っていく。

今日の日経新聞の別冊を眺めてみるとその現象が手にとるようにわかる。

東北の宮城県仙台市青葉区の数値は多少ばらつきはあるものの上昇と下落が入り混じっている。同じ東北の青森県青森市は数値が上昇しているところはひとつも見当たらない。

 これでは同じ東北に土地を保有していても、都市部と地方の格差は一段と開いていく。

更に3大都市圏と地方の地価の格差は一段と広がっており、本日発表の基準地価の上昇を素直に喜んでいる場合ではない。

特に都市部の地価上昇に拍車をかけているのが不動産投資信託(以下、REIT)の登場ではないだろうか。

筆者はREITを悪者にするつもりはないが、不特定多数から資金を集める上場REITがすでに38本もある。

その時価総額はおおよそ3兆8000億円にもなる。

従前はこれらの不動産は大手の不動産事業者や事業会社によって保有されていた。

それを賃料から逆算した収益還元方式で不動産価値を計算してREITが買い取っていったのである。

基準地価や路線価をベースに金融機関から借入を行う際の担保としての価値しかなかった不動産が、収益還元法のお陰で思いも寄らぬ価値が付いてしまったことが都市部の不動産価格を上昇させ、おまけに地価の高騰まで招く結果になっていると考えられる。

今朝の日経金融新聞で、「首都圏のREIT保有の不動産が地価の上昇で含み益が出来た」と書かれている記事があったが、もし地価の上昇が賃料に反映していないとするならば、含み益はあくまでも含み益であって、含み益を勘案した不動産価格での譲渡(売却)は不可能であるはずだ。

仮に地価上昇の含み益のみを考慮した価格で不動産が流通し始めるとしたらきっといつか来た道を戻ることになり、それはバブルとなる。

そして上場REITの予想利回り(現状では3〜8%)は大幅に低下し、投資妙味は失われてしまう可能性が高い。

今のREITの利回りを確保するには、REITの運用者が含み益を前提とした物件の組み入れを行わないことを祈るだけである。

ここで個人投資家が気をつけなければならないことは、REITは上場しているものだけでないということだ。私募ファンドの出口(物件譲渡先)として上場REITが受け皿になっている可能性が高いのである。

今回の基準地価の上昇でREITの低利回り物件のババ抜き合戦が拍車をかけると考えておいたほうがいいだろう。

最後に付けが回ってくるのはいつも個人投資家である。 上場REITを保有されている投資家の皆さんは丹念にREIT各社のホームページで組み入れ物件をチェックされることをお勧めしたい。

 

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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