ここのところソフトバンクと楽天の株価が冴えない。
その背景は最近の外資系証券会社が書いたアナリストレポートの相当厳しい評価にありそうだ。
筆者の目には、外資系証券会社のアナリストレポートは、既存のオールドエコノミー企業を守るために新興企業の巨大な経営者パワーを殺ぎ落とそうとしているように見えてならない。
ソフトバンクはボーダフォン買収による資金負担。
楽天はネット企業としての成長の鈍化と巷で駆け巡る三木谷氏へのバッシング。
この二つの銘柄は個人投資家の人気銘柄で、大幅な下落となれば株式市場に大きな影響を与える。
振り返れば2000年の春にも似たような話があった。
その時の銘柄は光通信。
当時の光通信は携帯電話の販売代理店会社という業態にもかかわらず証券コードの分類では通信の分野にカテゴリーされた。
2000年2月に24万円まで上昇した株価は3ヵ月後に1万円を割り込んでしまうのであった。
光ショックとも言われた大幅な株価下落で当時の光通信社長の重田氏はメディアから姿を消していったのであった。
そして5年の時が過ぎて光通信の業績は急回復するが重田氏が表舞台に出てくることはなくなってしまった。
新興市場を代表する企業は株式市場で実態よりも大きく評価され、その結果時価総額が経営者に巨大なパワーを与える。
でも、そのパワーが失われた瞬間(時価総額が下がった)に経営者のカリスマ性も色あせてしまうのである。
直近の例で言えば、TBS買収に乗り出した楽天が挙げられる。
楽天の三木谷氏がTBSの株式を取得したことを公にしたのは昨年10月であった。楽天の株価が現在のちょうど2倍で時価総額が1兆円を超えて1年が過ぎた頃である。
TBSの時価総額を3倍も上回る楽天の時価総額であればTBSの過半数の株式を握ることは不可能ではないと三木谷氏は考えたのではないだろうか。
ところがこの1年間で楽天の時価総額は半減し5,000億円になり、一方のTBSの時価総額は5,000億円を超す水準を維持している。
経常利益の規模からすれば楽天はTBSの2倍の時価総額であってもいいはずだが、株式市場は利益を素直に反映しないのが常である。
今回、表舞台から消え去ったのは楽天の三木谷氏であるが、TBSの経営陣も安穏とした日々を送っていられる期間はそう長くはないだろう。 なぜならば現状の時価総額が長続きするとは限らないからである。
いつの時代もそうであるが、株価が経営者にパワーを与えるが、そのパワーは突然の株価下落と共に消え去ってしまう。
そして経営者はまるで魔術が使えなくなってしまった魔法使いのような存在となるのである。
経営者がこのような悪夢を見ないためには、常に中期事業計画をベースにしたフェアバリューを確認しておかねばなるまい。
そして行き過ぎた株価を自らの実力と過信しないことが重要である。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com |