9月のIPOは15件。上場市場別内訳を見ると、JASDAQ7件、東証マザーズ5件、そして大証ヘラクレス、名証セントレックス、東証2部がそれぞれ1件ずつとなった。昨年が14件、一昨年が16件であったことからすると例年どおりの水準であった。
初値騰落率を見ると、今年のIPO企業127件の平均は89.3%とほぼ公開価格の2倍の水準となっている。ところが9月の15銘柄だけを見ると、年初からの127件のIPOで初値が公募価格を割り込んだのはたったの6銘柄に留まっているにもかかわらず、そのうちの3銘柄が9月に出現してしまった。
年初から月別に初値騰落率を時系列で見ると、1・2月:96%、3月:78%、4月:196%、5月:149%、6月:53%、7月:63%、8月:55%、9月:37%、と6月以降の初値は年間平均値を大きく下回っている。
この背景にはセカンダリー市場の低迷が挙げられる。1月のライブドアショックで大幅な調整を余儀なくされた新興株式市場は6月上旬に1番底を付けたあと7月下旬に2番底、そして9月下旬にかけて再度下値を模索するような動きとなっている。日経平均株価やTOPIXを構成する大型株のパフォーマンスが非常に良く、新興市場の資金を奪ってしまったかのような形となっている。
9月の注目銘柄として上場承認された時から各種メディアが取り上げたのが9月14日上場のミクシィ(東証マザーズ:2121)である。500万人の会員を保有するSNSを運用するインターネットメディア企業であるが、株価のほうは期待値が大き過ぎたといえよう。公募価格155万円は今期の業績予想ベースで計算するとPERが110倍、初値の295万円に至ってはPER210倍で時価総額は2,080億円である。今期の予想経常利益が17億円であるが、PER200倍とは市場平均のPER20倍からすると約10倍、つまり経常利益が170億円の企業と同じ価値を株式市場は付けていることになる。
事業形態は全く異なるが、他のメディアの時価総額を見ると、テレビ朝日2,400億円、テレビ東京865億円、スカイパーフェクト1,400億円となっている。ミクシィのメディア価値とここに挙げた3社のそれぞれのメディア価値を比較すればその優劣は歴然としているはずである。なにの株式市場では同じかそれ以上の時価総額が付いてしまっていることにかなりの疑問を抱かざるを得ないのではないだろうか。
さて、10月の展望であるが、17社の新規上場が承認されており、そのうちの3銘柄が東証1部に上場の予定である。その中でも超大型のIPOとなるのは10月3日上場予定の野村不動産ホールディングスと10月24日上場予定の出光興産である。この2銘柄の資金調達額はそれぞれ1,645億円と623億円を予定されている。そして17社の資金調達予定額の総計は2,676億円と年初から9月までの年間資金調達額合計の50%近く1ヶ月で吸い上げることになる。
例年このような大型のIPO案件が出てくると初値騰落率は一段と押えられることになるが、逆に個人投資家に広く薄く配分されるが故に野村不動産や出光興産のIPOが成功すると株式市場は一気に息を吹き返す可能性がある。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com |