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編集長のジャストフィーリング 〜 機関投資家の信用取引〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

3月下旬に日銀がゼロ金利解除を決めたことで始まった円高トレンドは5月の中旬まで続き日本の株式市場を直撃することになった。

その影響で輸出関連事業を営む上場企業は期中の為替レートを110円前半で計算して業績予想を出すようになり、今期の経常利益の成長鈍化に拍車がかかり株価は天井を打つ形となってしまった。

日本株の事情だけを見ると、為替は非常に重要なファクターであるが、実は日銀のゼロ金利解除は、グローバルな円キャリートレードの終焉でもあった。日経平均株価の動きに米国ダウ平均株価を重ねてみると5月12日の週に下降トレンドが始まり終焉を迎えたわけだ。

そして7月中旬に再び上昇トレンドが始まっている。

7月中旬のマーケットの動きを見るといろんなことに気がつく。

日本の10年物国債指標銘柄そして米国の10年、30年国債の利回りが下がり始めている。

円ドル為替は115円を抜いて円安トレンドが始まっている。

そして金、原油、商品などが揃って下降トレンド入りした。

上昇しているのは世界的にみて株式である。欧米ともに年初来高値水準まで上昇しているのはなぜだろうか? 企業業績がここ数ヶ月間で欧米企業だけが良くなっているわけではない。

とするならば、昨年後半の過剰流動性が復活してきた可能性があるとの見方ができるのではないだろうか。

世界的にみて非常に金利が低い水準にある円で資金調達を行い、まずは欧米の株式に投資を行った結果が7月中旬以降の世界同時株高を引き起こしているだろう。

120円を伺うような円安は日本の個人投資家の外貨への投資だけでは説明がつかないだろう。輸出企業は円買の実需があるはずなのに中間決算期の9月も円安が続いている。つまり確実に資本的取引を行うための円からドルへの資金シフトが起こっていることである。

ここ数ヶ月間は確実に投機筋がキャリートレードで為替と株の両方のキャピタルゲインを享受しているといえる。

簡単に説明しておこう。

まず為替。 

為替レートが110円のときに円を調達してドル転換すれば110円が1ドルになる。 その1ドルは120円になるので、10円のキャピタルゲインが発生する。 もちろん、借入には金利が必要だが短期の円資金は1%未満である。かりに1年借りても、1ドル分で1円くらいのものである。

次に米国株式。

7月中旬の米国ダウは10,800、それが12,000の水準まで10%超の上昇となった。

投機筋はほんの数ヶ月間に為替と株式で20%超のキャピタルゲインを出せる水準までポジションを作り上げたのである。

今後の展開であるが、日銀の金利政策は年内は変化が無いとすれば、焦って低金利の円資金を返済する必要はなく、もうしばらくはこの状況が続くとみてもいいだろう。

次なる標的としてはまだ上昇余地があるものが狙われるのが当たり前である。

欧米とくればアジアはどうだろうか? 香港、シンガポール、上海などの株価指数はすでに年初来高値水準である。 まだ完全に動ききっていないのは、消去法で日本ということになる。中でも、日本の新興市場は完全に出遅れている。

4月に日銀が動いたときは、いったんポジションクローズで動いた投機筋もよくよく考えてみると日本の政策金利である公定歩合は1%未満であり、再度の利上げがあっても世界で一番金利の低い通貨であることを見抜いてきている。

我々個人投資家が常に気をつけなければいけないことは、投機筋のポジションは一気に動くことがあるということである。

信用取引で期日が来たら反対売買をするようなもので、この世界には無期限信用取引のように反対売買を永遠に伸ばすことなど不可能なのである。

 

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