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コーヒーブレイク 〜短期思考を捨てて!〜
  株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史(CFA協会認定証券アナリスト)
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米国に本部を置くCFA協会(証券アナリスト協会)では、証券市場に参加する様々な立場の人向けの啓蒙活動を行っています。その一環で今年6月に「Breaking the Short-Term Cycle」というタイトルのレポートを出しています。

市場参加者(セルサイドアナリスト、運用会社経営者とファンドマネージャー、それに上場企業の経営者も含む)は、企業の短期的な業績に過度に囚われず、中期的な成長性を予想し、それに基づく企業価値を推定し、投資判断を行うべきである。

こうした投資の原則とそれに基づいて取るべき行動指針が展開されております。米国においてはアナリストまたは企業が発表する四半期の業績予想と、それに対する実績が上回るかどうかという点に非常に大きな注目が集まっています。

このレポートの中に市場参加者へのアンケート調査結果も盛り込まれており、様々な立場の参加者が短期的な思考の弊害を感じており、四半期の業績予想はやめるべきだという意見も含めて、短期思考偏重の傾向から長期的思考へのシフトに努めるべきだという考え方が強くなっていることを示しています。

一方日本においては、平成20年4月からは四半期報告書までが義務付けられるなど、四半期重視の中で、「四半期の実績報告はするとして、四半期の予想も出そうか、そのほうが説明しやすいし。」と考えている企業もあるようです。日米で反対の流れができつつある?のかもしれません。四半期開示が既に定着し、それにより短期的な思考が強くなりすぎた米国で、現在どのような考え方が出てきているのか、このレポートからご紹介します。

CFA協会の主張する、企業経営者・運用会社幹部・ファンドマネージャー・アナリストの取るべき行動

  1. 業績予想の方法を改善する。企業がアナリストの作成する業績予想を誘導するような慣習は廃止し、さらに四半期予想とそれに対する実績がどうであったか、という短期的な評価の繰り返しに過度にエネルギーを割かない。
  2. 長期的なインセンティブ・プログラムを導入する。企業経営者と運用受託者の報酬インセンティブを長期的な企業価値・運用成績の向上にリンクさせる。
  3. 企業や運用会社の経営者は長期的な価値創造を目指すリーダーシップを発揮する。
  4. コミュニケーションと透明性を高める。企業と投資家は、企業の戦略と長期的な企業価値向上のドライバーについてより意味のある、より頻度の高いコミュニケーションを持ち、短期の業績予想への依存度を下げる。
  5. 長期思考のメリットと短期思考のデメリットについて、市場参加者を啓蒙していく。

各点についてさらに具体的に以下のようなことが上げられています。

(1)業績予想について

  • 企業からアナリストに対しての四半期の業績予想の誘導材料の提供はやめる。
  • 四半期予想に関する情報提供が必要な場合は、企業の長期的な戦略と目標に見合ったフォーマットでの開示様式で行う。
  • 質の高い、長期の観点、根本的な数値予想の提供で、能力の高いアナリストが独自性のある、質の高い予想ができるようにする。

(2)インセンティブについて

  • 企業経営者の報酬・インセンティブを長期的な企業価値の向上にリンクするものとする。
  • ファンドマネージャーのインセンティブも、顧客資産価値の長期的な拡大に応じた形式とする。
  • ファンドマネージャーのインセンティブ制度、運用報酬体系、運用ファンドに対するマネージャー個人の持分を開示する。
  • ファンドマネージャーは、投資対象企業が経営者のインセンティブ制度について、長期的な視点で整備していくように働きかける。

(3)リーダーシップについて

  • 短期予想よりも長期的な戦略・経営目標と関連する指標を伝えようとする企業経営者のリーダーシップを後押しする。
  • 長期の視点で分析をするアナリスト、投資判断をする運用者を支持する。
  • 運用会社が自らの価値についても長期的な向上にフォーカスし、運用者の評価も同様の観点で行うように働きかける。

(4)コミュニケーションと透明性について

  • 企業は、長期的な戦略やビジョンに関して、より価値ある情報を頻繁に出すこと。投資家は会社の事業の実態を示す透明性の高い財務情報を出すことを会社に求めていく。
  • 企業に対しては、会計用語や法律用語主体でなく、普通の分かり易い言葉での情報発信を促す。
  • 企業に対しては、企業の株主に対する長期的に投資に対して報いる方針の表明、どんな事業モデルにより企業価値を向上して株主に報いていくのかの表明を促す。
  • 企業のIRと広報や法務など、対外的なコミュニケーションを司る部門間での連携を強めて、連動・統一した考え方を発信することで、投資家やアナリストを混乱させないようにする。
  • 運用会社は委託者・顧客に対して、自社の長期的な運用方針を示していく。

(5)投資家教育について

  • 企業は、自社が投資家からどのように評価されているのかをよりよく理解するため、運用者や証券市場のオピニオンリーダーとの会話を持つように促す。
  • 機関投資家とそのアドバイザーに対して、短期思考の弊害、長期的な受託者責任について教育する。

個人投資家がより長期的な観点で投資を行うような教育活動を支援していく。

 

コーヒーブレークのブログ書いています。http://ameblo.jp/mplstwins/

株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
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