昨日の夕方一通のメールが携帯電話届いた。 知人からメールアドレスの変更を通知するものであった。 今回のナンバーポータビリティー制度を使ったらしく、電話番号は変わらないと書き添えられていた。
週末のテレビの報道などで携帯電話のナンバーポータビリティーでキャリア3社の熾烈な戦いが始まったことは読者もご存知のとおりであろう。
その3社の中でボーダフォンを買収したソフトバンクモバイルは「予想外割」というソフトバンクモバイル間の通話料とメール代金を「0円」という一見するとかなりお得なサービスを始めた。
その影響かどうかはわからないが、ソフトバンクモバイルの店頭では今回の制度を使った切り替えをする人が多くて、顧客の受付をシステムが処理できないという異例の事態が起こってしまった。
NTTドコモとKDDIの2社がソフトバンクモバイル社の受付停止に対して書面にて抗議を行ったのは当然の処置だと考えるが、ドコモの中村社長は「実際にそんなに安くならないのに広告で『0円』と銘打つのは公正なやりかたではない」と批判している。
ソフトバンクはいつもやり方を今回も踏襲した。前回のADSLの時と同じように後発で既存のサービスを世の中に浸透させるには価格に訴求するのが一番である。
孫社長は次のようにコメントしている。
「行くところまで行く。どこまでも安くする。日本の携帯の料金は今まで高すぎた。各社が利益を上げすぎたのではないか。私どもはこれを利用者に還元していきたい。」
NTTドコモの今期の売上予想は約4兆8000億円、税引き前利益予想は8,150億円。
KDDIの今期の売上予想は3兆2930億円、経常利益予想は3,150億円。
この2社の売上合計である約8兆を携帯電話のユーザーに還元しようとしているのがソフトバンクの孫社長である。
日本の通信業界を牛耳ってきたNTTの前期の連結売上は10兆7,400億円、営業利益が1兆1,900億円で売上高営業利益率は11%である。
NTTの事業はすでにサービスそのものがコモディティー化しており、サービスそのもので他社と差別化することが難しくなってきているといえるだろう。
NTTの営業成績にはNTTドコモの業績も含まれているとは言え、携帯電話の通話とメールというサービスがコモディティー化の波にさらされていることを考えれば、NTTドコモの売上高営業利益率も10%そこそこまでの低下はやむを得ないのではないだろうか。
明確な差別化戦略のないサービスにおいて、企業が顧客価値、言葉を変えればユーザーメリットを追及することは価格に訴求することであり、売上と利益は低下せざるを得なく、株主価値は毀損されていくはずである。
携帯電話各社のサービスに新たな付加価値が加わらない限り3社による非常に厳しい消耗戦が続くと考えられる。
とくに携帯電話ビジネスに特化しているNTTドコモの中村社長のソフトバンク批判は、自らの業績が厳しくなることを物語っているように見えるのは筆者だけだろうか。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com |