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編集長のジャストフィーリング 〜 IPO市場の10月総括と11月の展望〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

10月のIPOは17件。上場市場別内訳では、JASDAQ3件、東証マザーズ5件、大証ヘラクレス2件、名証セントレックス3件、福証Q-Board1件、そして東証1部が3件であった。昨年の9件に比べると大幅増となったように見えるが、日本企業は3月決算が多いためこの時期は例年多くなる傾向にある。

10月に市場の注目を集めたのは、今年の資金調達額で1、2位を占める野村不動産ホールディングスと出光興産である。

両社の資金調達額はそれぞれ1,645億円と623億円で、10月までの全IPO資金調達総額の実に30%強にあたる金額となる。通常、この規模の大型上場銘柄が2社も出てくると他のIPO銘柄に向かうべき資金が吸い上げられて全体の初値騰落率が押し下げられる傾向が出てくる。その結果として10月のIPO銘柄の平均初値騰落率は18.44%と今年の平均初値騰落率88.62%を大幅に下回っている。

一方で、大型上場は公開株数が多いため個人投資家に広く薄く配分されるために、ある程度高い初値となることで、多くの投資家に次の投資へと向かう資力と気力を与えることになる。

野村不動産が公開価格3,500円に対し初値3,900円でプラス11.4%、出光興産は9,500円に対し10,500円でプラス10.5%とこの規模にしては上々の初値騰落率となった。また、野村不動産は上場後の株価も堅調に推移しており、今年のIPOは総じて初値以降株価が下がることに嫌気がさしていた個人投資家のIPOアレルギーを払拭することができたと言えよう。11月以降のIPO市場に期待を抱かせる結果となった。

10月IPO銘柄の特徴としてM&A時代を反映した2社が上場してきた。1社はメディアへの露出も高い佐山展生氏が代表を勤めるM&Aのアドバイザリー業務を営むGCA、もう1社は中小企業の事業継承を中心にM&Aの仲介業務を行う日本M&Aセンターである。いよいよ日本企業のM&Aも本格化の道が開かれてきたことを象徴する2社のIPOであった。

またもうひとつの特徴としては、会社設立後3年以内で上場してきた会社が2社ある。前述のG

CAは2年6ヶ月、携帯電話のソフト開発のアクロディアが2年3ヶ月で上場を成し遂げた。上場において内部管理体制などの審査が厳しくなる中において、証券市場が創業間もない企業に成長資金を提供することができる機能を失っていないことを証明することができたのではないだろうか。

日経平均は6月の年初来安値から2度のアップダウンを繰り返した後、9月26日を底に3度目の上昇局面が曲がり角に差し掛かったようである。現状は大型株中心の相場であり中小型株は復活の兆しが見えないが、11月14日上場予定の「あおぞら銀行」が大型株好調の流れに乗ることができれば、野村不動産、出光興産に続いて多くの投資家に資力と気力を与え、年末にかけてのIPO市場に好影響を及ぼすことになるかも知れない。

例年この時期のIPOは件数の多さから初値は弱くなる傾向にあるが、逆にIPOの件数が少なくなる1月には物色の対象になることが多い。業績好調なIPO銘柄で初値が低かったものは絶好の投資対象となる可能性が高い。

 

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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