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「凡夫が教訓を解釈すれば」
  日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり)

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昨年の今頃、ジェシー・リバモアの話を書いた。投資には哲学が必要で、最も大事なルールは「カネを失うな」であり、2番目は、「ルールを忘れるな」であることを。当然ながら、筆者を含めてそんなルールを守れる人は少ない。つまり、市場に勝ち続けることは一般に不可能だ。カネを失わずにすむのは、普通の人々にとっては避け得ない。

IPO市場が不調な中で、凡人が安らぎ感じるは、失敗が自分ばかりではないという発見だ。好調な時の戒めと、不振な時の慰めが他人の失敗であるのは凡夫に共通するところだ。その失敗度合いの多くは統計で示される。

11月下旬の段階で確定した公開後1ヵ月後の株価(8月下旬までの公開企業の1ヵ月後騰落率)を見ると、上場初値を維持しているのは23%でしかない。昨年の同じ時期にはこの比率が32%だった。
IPO銘柄の公募株を入手できない比率は極めて高い。このため、市場で初日に調達して1ヵ月間持ち続けた場合、今年は5分の4の銘柄が値下がりしている。昨年の場合はその確率が3分の2でしかなかった。

この違いの大きさは、凡夫にとって大きな安心感になる。損を出しているのは自分だけではないし、確率的に見てそんなに上昇する銘柄が少ないのならば銘柄選択力というよりは外部環境による逆風が失敗原因なのだと。

多くの凡夫がこう考えてくれるからこそ、株式市場では個人投資家が絶えることなく際限なしに登場してくる。ただ、事実として損失を抱えた状態では、次の投資資金を捻出できない状態にある、というのが市場参加者に共通している点だ。公募に応じるにも、資金不足でIPO銘柄への投資意欲が減退する。結果的に、公募株が抽選で当る確率が上昇する。

これに、少数の投資家による値付けで、安めの価格帯が中心になってくる。これが投資家の資金を再び、少しずつ呼び込む。そんなプロセスをまだ経ていないので、当面のIPO市場は活気のない状態が続くかもしれない。

こんな時凡夫には、投資なきリターンなど存在しない事を忘れて、「カネを失うな」という言葉上のルールばかりが脳裏に浮かんでいる。利益以上の損を出すなという積極行動を忘れている訳だ。IPOスランプの今は、積極投資家にはチャンスかも知れない。

 

日系投資会社在籍 P.N.候鳥(わたりどり)

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