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アナタハ 経営者ヲ シンジマスカ?

某運用会社日本株トレーダー 鰊(にしん)
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皆様、ご無沙汰しております。鰊です。今年は個人的に色々ありましたが、環境も変わり、数年来の停滞から抜け出せたような、充実した一年でした。

あとは新興市場が盛り上がれば。。。

さて、読者の方からメールで質問をいただいていたのですが、申し訳ないことに1ヶ月弱も放置してしまいました。メルマガの頻度が落ちると、メールボックスもチェックしなくなってしまうので。というのは言い訳ですが。

その質問の中で、「新興市場の長期展望は難しいのか?今年の状況を予想したプロはいなかったのではないか?」とのコメントをいただきまして、今日はその関連事項がテーマです。

なお、中盤はアカデミックになってしまう予定です。

まず、個人的に「新興市場の長期展望が難しい」というよりも新興市場に属するする企業の長期展望が極めて難しいと考えています。新興市場は長期投資に向いてないといっても構いません。

というのも、いわゆる新興市場に属する企業の高い成長性は、類似のビジネスモデルがない、競争相手が少ない、市場が拡大中といった外部環境に支えられている点が大きいからです。

上場企業というのは日本全国90万とも言われる企業のトップです。しかし、それらの企業でも、競争の激しさが増し、マクロ環境が変わり、それまでの武器であったビジネスモデルをマイナーチェンジさせようとすれば、ちょっとした弾みで業績が急激に悪化してしまいます。

その原因は様々ですが、投資家にとってもっとも問題なのが「決算が出てみないと新興企業の業績は分からない」ことでしょう。「月次どころか週次業績が欲しい、IT企業なんだからさ・・」というのは酔ったファンドマネージャーの愚痴ですが、FMは毎日評価される仕事だけに愚痴るのもよしとします。

何にせよ、四半期が出たときに大幅下方修正というのは、本当に耐えられません。

先日下方修正を発表した某企業のアナリストレポートは痛烈そのもの。「9月には下方修正が見えていたのに、IRでは業績は順調だと主張していた。一生、この経営者の言うことは信じない。」こんな恨みの篭った文章は初めて見ました。もっとも、アナリストならこんな経験は少なくないらしいです。

これらの企業の実態と投資家の溝を埋める数少ない手段が、企業説明会等のIRと、投資家の自衛手段である分散投資です。今回は前者のIRについて掘り下げます。後者もいずれ掘り下げたいですね。勘違いされている方も結構いらっしゃるようなので。本質的には分散投資は利益を伸ばすためでも、損を限定するためでもありません。

ここからが、今日のテーマである「経営者のIRは信用していいのか?」です。

企業経営者の信用について、アカデミックな世界では「プリンシパル−エージェント問題」として研究されています。すなわち経営者は、株主の代理人(エージェント)として常に企業価値を最大にするよう努力してくれる信用のおける人間なのか?ということです。

もちろん「現実の経営者の全てが怠けている」と言ってるではなく、「企業経営者は何の制約もなければ、株主の利益に沿って行動しない」と問題提起しないと、議論が始まらないのでこういう形を取っているだけです。

ここで、経営者にどんな問題点があるのかというと、コーポレートファイナンス(ブリーリー&マイヤーズ)をベースに列挙すれば、

  1. 努力を怠る
    利益を追求するということは、真に価値のある事業への投資を選択することであり、多大な努力を必要とするプレッシャーの高い活動であり、常に努力を怠る誘惑に駆られている。
  2. 役得
    給与・ストックオプションだけではなく、スポーツイベントの入場券、ホテルのスイーツルーム等の(会社にとって利益をもたらさない)非金銭的な報酬を得る場合がある。
  3. 帝国の建設
    他の条件が同じであれば、小規模な事業よりも社会的認知度の高い大規模な事業を好む。必ずしも正の価値をもたらすわけではなく、会社の身の丈に合ってなくても関係ない。
  4. 既得権益擁護のための投資
    事業に投資する際に、(自分を含めて)既存の担当者の技能や経験で足りる方を選択する。事業の理解度の面では当然の選択かもしれないが、こういった投資は安易な判断で過剰投資に陥る可能性が高く、必ずしも会社の価値を高めるとは限らない。
  5. リスクを避けること
    給与が固定給である場合、リスクが少ない事業を選択する傾向がある。

海外のコンテンツ会社を買収。インターネット接続事業への参加。
キャッシュが潤沢なのに新しい事業に投資せず、市場拡大が見込めない既存事業に投資して過剰な設備を抱え込む。経営者の判断ミスにはこんな心理が働いているのかもしれません。

これらの問題の対策としてはインセンティブやモニタリングといった手法あり、それぞれの長所短所も詳しく述べられてますが、それはいつぞやの機会に。

ともかく、ちょっと意地の悪い見方ですが、経営者は構造的にこういった問題を抱えていると考える連中もいるわけです。経営者も人間ですしね。

では、投資家は彼らのことを信用しても良いのでしょうか?
本当に彼らは株主価値を最大にすべく努力してくれるのか?
IRでは投資家にとって重要な内容を教えてくれているのか?
投資家が喜びそうなニュースを言ってるだけではないのか?

答えとしては、信用する以外に選択肢がありません。企業が進む方向というのは、彼らにしか決めることはできませんし、投資家は彼らから情報を入手するしかないのですから。

下方修正するにしたって、数字が固まらないと明確なことは言えないし、ある程度「ちょっとまずいなー」と思ってスタンスを変えると、それまでのIRで言ったことを翻すと他の投資家に不公平。

経営者として頑張っていて、それをPRしても結果として上手くいかない場合もあるし、近い未来下方修正するのだから、今すぐ公表しても後で公表しても、既存の投資家にダメージを与えることは変わらない。

悪い経営者がいることは否定しませんし、構造的な問題を抱えていることも事実でしょう。かと言って信用しないことには何も得られません。

新興市場に投資して高いリターンを期待するのであれば、リスクを受け入れる、一つの企業に投資しない、投信を買う、自分の目を信じる。こういった覚悟の上で、IRに参加するしかないかもしれません。

悪意をもって騙されてたとしても、善意で結果的に騙されても、結果は変わらないのだから。

そういえば、これを書いているときにライブドアという存在が全く頭をよぎりませんでした。

時間って早い。そういえば、ライブドアブログも更新してないなあ。。。
思い出してしまいました。


某運用会社日本株トレーダー 鰊(にしん)
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