11月のIPOは14件。上場市場別内訳では、JASDAQ5件、東証1部3件、東証マザーズと名証セントレックスがそれぞれ2件、東証2部1件、大証ヘラクレス1件であった。件数ベースでは昨年の3件に比べると大幅増となった。また市場調達額で見ると、10月の3,005億円に引き続き11月は4,500億円となった。
今年は10月3日から11月14日の40日間で調達金額が1,000億円規模のIPOが5件あった。調達額の規模の順で、あおぞら銀行1992億円、野村不動産1645億円、アコーディアゴルフ1239億円、タカタ984億円、出光興産813億円。この5社で6,674億円の資金を市場から吸い上げたのである。11月17日までの全IPO企業152社の資金調達額のなんと57%であった。
この5社がIPOで得た資金が新たな投資に回るのであれば言うことはないが、既存株主のイグジット額が4,055億円であったことがIPO市場を崩壊させることになってしまった。あおぞら銀行とアコーディアゴルフは外資ファンドが再生案件として取り組み、今回のIPOは再生成功のご褒美的な位置付けであった。この時価総額で新たな株主になる投資家が外資ファンドと同じようなリターンを上げられることはありえなく、またもや一番美味しいところを外国人投資家に持っていかれてしまったのである。
前述のような大型IPOのお陰で、今年の初値騰落率平均値は76.54%であるにもかかわらず、10月銘柄の平均値は12.67%まで落ち込み、そして11月銘柄の平均値は±0%まで落ち込み公開価格を初値が維持するのがやっとの状況となってしまった。ところが、あおぞら銀行の二日後にIPOしたアイレップ(大証H)は初値騰落率こそ37%とそんなに高くはなかったが、上場日の引けはストップ高の買い気配で終えた。またその翌日にIPOした第一精工(JQ)は初値こそ公開価格3,200円と同値であったが終値は初値から660円高の3,860円となった。この2銘柄の値動きを見ていると2ヶ月間に渡り大型IPOに相当額の資金が固定されていたわけだが、あおぞら銀行の上場で一気に資金が回転しだしたと言える。このところ初値を押さえ込んでいたのはまったくの需給が要因であり、この重しがとれたことにより11月中旬から状況は一変してきたといえる。
さて、12月のIPOであるが、昨年12月同様に30件と相当多くなった。資金調達額は30社で1,200億円と相当額になるが、1社で1,000億円規模の調達を行う企業は1社もなく10月、11月のように市場の需給を極端に悪化させるようなことにはなりそうにない。
12月銘柄の特徴としては、過去に一度上場承認されたが事情があって上場承認取消しとなった案件が2社復活してきている。その2社とは、オンラインゲーム運営会社のゲームオンとTVのCMでもお馴染みのセキュリティソフト開発・販売のソースネクストである。11月22日上場のエレコムも復活組である。上場審査が厳格化されている中での再承認ということで期待して見守りたい。
資家の視点でIPO銘柄を見ると、初値騰落率が低くなるときこそが投資のチャンスである。10月、11月のIPO銘柄の中から公開価格を割り込んでいる銘柄を探し、売上・経常利益が今期も成長している企業があれば投資を検討してみてもいいだろう。新興市場に上場している企業への投資はあくまでも企業の利益成長に投資するのが前提であることを忘れてはいけない。
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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