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コーヒーブレイク 〜新年にあたり「会社について」考えました。〜

株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史(CFA協会認定証券アナリスト)
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旧年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願い申し上げます。年末 にクライアント以外の企業(会社の成り立ちや規模は異なるものの、いずれも 上場前後の段階にある成長中の企業)の経営者の方のお話を伺う機会が3回ほど ありました。そこで伺ったお話を参考に、良い会社を作るには?というテーマ で考えてみました。

最初は日興アセットマネジメント(以下、日興AM)のビル・ワイルダー社長。同 氏を囲むランチミーティングに参加することができ、ワイルダー社長が日興ア セットを魅力的な運用会社にするため、どのような組織変革を行っているかと いうスピーチを伺いました。基本は、「この会社は何をする会社であるのか?」、 「それを中心になって推進するのは誰か?」を改めて定義し、その集団が本来の 業務に集中できる環境を徹底的に追及し実現するということでした。同社にあ てはめれば、当然ながら資産運用をする会社であり、中心となって推進するの はファンドマネージャー(FM)です。そうすると必然的にFMが運用に集中できる 環境を整備することが経営者の最大の役目である。しかしながら日本の多くの 運用会社においては、FMは種々雑多な報告書等の書類作成、顧客への説明、運 用部門全体の運用戦略会議など本来の運用業務以外の活動に時間を取られるこ とが多い。当日のある参加者は7割くらいそんなことに時間を取られていると 嘆いていました。ワイルダー氏は、書類作成については専門の人を置き、無駄 な会議は廃止するなどの取組でFMが本来の業務に専念できる環境を実現して来 ました。それと並行してFMの報酬制度もFMに相応しく、かつ透明性の高いもの に変えて来たとのこと。またIPOを目指すことを公言していますが、これにつ いてはFMを始めとする社員の報酬制度を考える中でストックオプションによる インセンティブが有効である、さらに親会社からの独立性を高めるために株主 構成を変えていくことが必要であると考えているとのことでした。直後に日興 コーディアルグループの事件があり、同社の上場にも少なからぬ影響は出るも のと思われます。皮肉にも改めて親会社からの独立性が重要であることを強く 認識させる結果となりました。

中旬にはGCA株式会社の佐山代表取締役と東京IPO西堀編集長の会食に同席させ ていただきました。そこでの詳しい話には触れませんが、"人"を主な経営資源 とする同社が、設立から僅か2年と少々で上場を達成した理由は何なのか、に ついて伺いました。同社は共同で代表を務める佐山氏と渡辺氏、それにお二人 の前職でそれぞれ同僚であった2人のパートナーを合わせた4名で設立されたそ うです。組織運営、人事評価、報酬制度、対顧客との関係(サービスの組立と 対価の考え方)など非常に特長的であり、佐山氏曰く「日本のほかのどのM&Aア ドバイザリー会社とも違う!」という点もなるほど、と納得するものでありま した。高い志を共有するパートナーが集まって創業し、互いの持つ力を結集し たこと。創業後の組織運営もユニークなパートナー制で行ってきたこと。ここ に新たに参加するメンバーについても同じ理念を共有できる人だけを厳選して きたことが成功の重要な要素であるようです。

年末には生まれたてほやほやの会社の社長さんにご挨拶に行き、お話を伺いま した。こちらは上場大企業の子会社という立場からMBOファンドの協力を得て 独立し、数年後のIPOを目指して活動を始めたばかりです。事前に聞いていた 事とは言え、過半数を保有するファンドからのプレッシャー、上場親会社の後 ろ盾がなくなり厳しくなった金融機関の融資姿勢、一緒に参加した社員数十人 に対する責任、新会社の株式購入に投じた個人資産など、重い責任とIPOまで の長い道のりを前に、「いや〜こりゃ大変だ〜」と改めて感じておられるよう でした。一方で自ら命名した新しい社名の下で大幅に自由度を増した経営権を 持ち、ファンドを除けば筆頭株主としての立場があり、モチベーションも高い 社員に囲まれた中で念願の第一歩を踏み出したことで、社長本人もやる気満々 のようです。

良い会社を作るには最高責任者(社長)のリーダーシップと人間性が何よりも大 切。その人の理想、考え方、行動が組織全体の性格や社員1人1人の行動にも大 きく影響し、周りの評価も決めていきます。良い会社、理想の会社、さらに立 派な上場会社を作る最良・最速の道は、志を同じくし信頼できるパートナーと ともに新たに会社を作り、途中から参加するメンバーについても、この人なら 一緒にやっていけると思える人を選別していく。加えて上場を目指すならば、 理念とともに、初めからある程度の規律・規程を導入し、それが自然に実践さ れているという文化を形成していく。それが解答と思います。既存の会社を変 えていくのは、時には新しく作ることに比べて数倍のエネルギーと時間が必要 と感じます。既存の会社には良い点も悪い点も含めて、内部に浸透した文化と 外部の持つ固定観念、さらに株主・取引先など、解きほぐすことが容易でない 事が多数存在します。

そんなことを考えた年末・年始でありました。今年も良い会社作りに色々な形 で参加していければと考えております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
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