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編集長のジャストフィーリング 〜貴方はプロの投資家ですか?〜

東京IPO編集長 西堀敬

早いもので個人投資家の皆さんを対象にしたIR会社説明会を始めて4年半が過ぎた。

第1回目のIRセミナーを開催したのは2002年12月だった。株式投資する人を探し出すのが難しいくらいに株式市場は陰の局にあった時期だ。

そんな環境の中、2002年12月に東京は茅場町の証券会館にお集まり頂いた個人投資家は100名くらいだったと記憶している。

東京IPOのサイトを運営し始めてまだ間もない頃で私は皆さんの前でご挨拶をするだけでも非常に緊張していたことを思い出す。

それは私の目の前に昔在籍した証券会社の調査部門や公開引受部門の部長職にあった方々の顔がずらりと並んでいたからに他ならない。

とにかく私よりも証券界での歴史が長く、株式市場の動きも知り尽くしているはずの御歴々の方々が私の開催するセミナーにお越しになるなんて信じられない思いがあった。

馴れとは恐ろしいもので、そのような方々が目の前にお越しになっても最近では何の気後れもせずにお話しするようになってしまい、挙句の果てには本まで出してしまった自分自身が最近は少し恐ろしくさえ感じてしまうことがある。

さて、今日の話題は私自身の事を皆さんに知っていただきたいのではなく、私の目の前にいつもお越しいただく株式投資の経験値の高い個人投資家の方々をプロの投資家と呼んではいけないという法律ができそうだという話である。

今年の9月に施行される金融商品取引法で「プロの投資家」の定義を読むと「金融資産が3億円以上ある」こととされている。

これではお金持ちはみんな「プロの投資家」にカテゴリーされるが運用資金が少額の投資家はいつまでたってもアマチュア扱いということになってしまう。

一昔前までは証券会社で信用取引口座を開設しようとすると預かり資産額の基準に加えて株式投資歴があった。経験が少ない投資家にはリスクの高い証券取引を行わせてはいけないという内規が証券会社にはあったはずだ。

それがネット証券が台頭しだしてからというものは、経験が短くてもどんどんリスクを取らせるルールに変わってきてしまったような気がしてならない。

今回の金融商品取引法で定める「プロ投資家」(条文では「特定投資家」と呼ぶ)であるが、金額基準よりも知識と経験値のほうを前提条件としたほうがいいのではなかろうか。

金融資産3億円基準ではサラリーマンとして現役時代に何百億円もの株式運用のビジネスに長年携われた方々も引退後は一般の投資家と同じカテゴリーに分類されてしまう。

リスクの許容度を資産基準で測るとはなんともお役所的な発想である。お金持ちは理解できないリスクを取って資産を減らしても喰うに困らないとでも言うのだろうか?

今年の秋には金融商品を販売している現場で、元プロ投資家の方々が「貴方はプロでは無い!」と言われて、販売員に「貴方はプロなのでしょうか?」と苦笑いしながら質問している顔が目に浮ぶ。

 

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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