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2007.5.7 No.494



『〜三角合併制度の延期は誰のためだったのか〜』 

 

3月決算企業の発表もそろそろ佳境を迎えることになる。

そして6月に開催される今年の株主総会でも昨年に引き続いて買収防衛策に関する議案を提出する企業が多いことだろう。

5月1日から1年間延期されていた三角合併の制度が実施に移され枕を高くして寝られない経営者も居るに違いない。

でも良く考えると、なぜ三角合併が1年間延期されたのかよく理解出きない。

結論から言えば、この1年間ではっきりした買収に名乗りをあげてくる一番怖い相手は同業を含めた国内企業であるはずだ。

その背景になるものはグローバルに活躍する企業はキャッシュリッチになっているということだ。

ドイツ証券の武者副会長の話では、過去の日本の加工型輸出企業は貿易摩擦などを回避する目的で自らの製品を販売する市場に生産拠点を置かねばならなかった。

ところが新興国の台頭により、品質を変えずに日本や輸出国よりも投資額が低抑え、製造のコストも相当安くモノ造りができるようになってきたのである。

新興国で製造しその製品を相変わらず先進国で販売するわけだから、粗利は高くなる。

つまり1単位の利益を上げるのに投資しなければならない額がかなり少なくてすむようになってきたのである。

となると、企業のフリーキャッシュフローはプラスになり銀行から借り入れたり、資本市場で調達する必要がないわけだ。

極まってくると無借金となって現金がバランスシートに溜まっていくことになっている日本企業が出てきている。

一昔前までは現金を溜め込んでいくことが経営が安定すると考えていた経営者もいたが、最近はそんなことをしていると外資系のアクティビストファンドに株式を買い占められてしまう。

ましてやこの低金利時代に現金を銀行の口座に眠らせておくわけにはいかなくなってきたのである。

稼いだお金を増やすために算段を常に考えなければ上場企業の経営者として認められない時代となってきたのである。

お金を如何に使うか?

まず株価を上げるために、増配で配当利回りを上げる、自社株買いで一株当たりの利益を上げる、等に現金を投入するのが原理原則である。

でも企業の絶対的な利益を増やすことにはならない。

となると最後の切り札はM&Aに資金を使うことになるはずだ。

自らの企業よりもROEの高い企業があれば完全子会社化を目指さないまでも持分法対象企業くらいまでは取得したくなるだろう。

日本のグローバル企業の収益構造はキャッシュが残るようになってきた。

王子製紙の北越製紙、HOYAのペンタックス等々を見れば一目瞭然である。

怖いのは昨日まで和気藹々と杯を傾けていた隣の日本企業である。

1年間の三角合併制度の延期は日本企業が日本企業をM&Aするための準備期間であったのかもしれない。

 

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com