先週の土曜日はその前の週に引き続いてアセット・マネジャーズ(大証ヘラ 2337)社の個人投資家向けIR会社説明会のお手伝いをさせていただいた。
先月に株主総会を終えて、株主総会に足を運ぶことが出来なかった株主と当社株式に興味を持つ個人投資家を招いての東京・大阪開催であった。
株価のほうは2006年1月から1年半の間に三分の一近くまで下落しており、長期保有の株主にとっては心配で仕方なく何をおいても説明会で社長の話を聞きたいという心境であったことだろう。
正直、このような局面での株主総会開催はやむ無しとしても、任意の個人投資家向けのIR会社説明会は開催したくないのがどの経営者も本音ではないだろうか。
会社側が何をどのように説明しても、最後は株価下落に対する責任論とその対策を求める声だけが会場に響き渡ることになる。
今世紀に入る前は、株式投資をするには証券会社の営業マンに電話をかけて注文を出すしかなかった。
そして当然のことながら、株式投資に関する情報も証券会社発のレポートが中心で、兜町のホットな話題については証券営業マンの「ここだけの話」に飛びつく個人投資家が多かったのも事実である。
つまり株式投資の損失の原因はそのほとんどが証券会社の営業のあり方にあったと言っても過言ではない。
ところが、個人投資家はネット証券会社を使うことによって、安価な株式売買手数料とリアルタイムの株価板情報を得てしまい、対面営業の証券会社を使わなくなってしまったのである。
その代わりに個人投資家は投資情報を対面営業の証券会社から得なくなってしまった。
つまりこの時点で、株式投資は「完全なる自己責任」で行うものになってしまったのである。
ところが、買った株が下落を始めると、自らの責任を放棄して、理由もなく投資先の企業にクレームするようになってしまった。
確かアセット・マネジャーズは数百万円を数億円にした伝説の個人投資家がトレーディングで大儲けした銘柄としてよく雑誌に出ていたはずだ。
大儲けした個人投資家は自分の投資の成功談を雑誌や自らの書籍で紹介しているが、それはすべて過去の話であって、雑誌や書籍に載った銘柄や右肩上がり
のチャートはすべて歴史である。
その過去の歴史が再現すると錯覚して高値でその銘柄を買った後に株価が下げたとしても、それは個人の責任であって会社とか経営者に言及する話ではないはずだ。
上場企業の経営者の責任は自らが発表した業績予想をなんとしても結果として残すことにあるはずだ。
株価とは生き物であるため、上がったり下がったりする。
だからその上下動をミニマイズするために流動性を高め、投資家ができるだけ株価の振幅に振り回されないような上手い情報開示とIR活動に努めるのも経営の責任である。
だが、株価とは経営者が作るものではない。
新規上場した企業の経営者は口を揃えて「市場に高い評価を頂いた」と言う。
その通りで、株価とは市場が付けるものであることを忘れてはならない。
ましてや市場とは投資家そのものである。
経営者や会社に対してクレームしている投資家こそが株価を動かしているのである。
その現実を知れば、株価投資とは、自分と同じ立場の投資家との心理戦であることが理解できるのではないだろうか。
その意味では、個人投資家の非難を浴びることを覚悟で説明会を開催したアセット・マネジャーズ経営陣には拍手を送りたい。
私がアセット・マネジャーズに拍手を送るのは、同社がナスダック・ジャパン上場銘柄の最後の1ページを飾ったときに続いて2回目である。